41.
オレの世界では毎日何処かで誰かが誰かに殺されたとニュースで流れる。
その理由は様々。
でも、オレの周りでは誰かが殺されることも、誰かを殺した奴もいない。
犯罪自体、コンビニバイトで遭った強盗だけだ。
なのに今。
異世界で誘拐されたオレはさらに最悪な現場に立ち合おうとしている。
被害者は、オレ(予定)。
生まれたての小鹿のように足がガクガクして、恐怖で声も出すことができない。
あの強盗なんてメじゃないくらい、状況は最悪だ。
戦い方を知らず魔法も使えないオレには、この2人から逃げ延びることも叶わない。
寧ろ、その場から一歩でも動いたら殺られる。
アウルはどうするのだろう。
オレを殺す?
それともオレを差し出す?
ただ、成り行きを見てることしかできない。
オレよりも大きく、目線の高さにある背中を見つめる。
「断る」
アウルの一言に息が止まる。
「……何だと?」
「どちらも断ると言った。俺はコイツを殺さないし、アンタらにも殺させない」
後ろに伸ばされた手がオレの手を握る。
緊張で冷たくなった手に触れるアウルの手もオレよりちょっと温かい程度だけど、その温かさで「はっ」と息を吐いて呼吸ができるようになる。
「アウル……」
名を呼ぶと握られた手に力が入るのを感じる。
それだけでオレの震えは少しだけ治った。
「そうか……残念だが、この依頼は不履行だ。この意味わかってるな」
「はっ、残念?……最初から俺を犯人に仕立て上げて俺ごと殺すつもりだったんだろ」
アウルの後ろからそっと男を覗くと男と目が合う。
ニヤリと笑った男は手を上げるとオレたちを囲むように武装した男が10人現れた。
「夜目が利く梟始末するにはそれなりの数がいる。気取られずに包囲するのは骨が折れたよ」
男が剣を抜くと周りの男たちも剣を抜いた。
その刀剣は炎を纏っているかのように青白く光っている。
「優れた身体能力を持つ君1人なら逃げる事はできるだろうが、その子どもを連れて我々から逃げおおせることはできるかな?」
「はんっ、俺には魔法は効かないって知ってるだろ」
後方から飛んできた火の玉は、オレたちに触れる前に霧散した。
「やはり魔法無効化は厄介だな。だが、これはどうかな?」
そう言い男が腰に下げていた袋から取り出したものは、手のひらほどの長さの針の束だった。
男はその針を魔法で浮かせるとオレたちに向かって飛ばした。
「クッっ」
アウルはオレを抱えると後ろに飛び退くと、オレたちがいた地面に針が刺さる。
アウルの能力では飛んでくる針のスピードは落とせるが物理攻撃自体は回避するしかないようだ。
オレたちを囲んでいた男たちからも針が飛ばされ、避けきれず体のあちこちに針が掠った。
針がなくなると剣の攻撃に移る。
アウルはオレを抱えて躱すがオレたちを囲む男たちからは逃げる事ができない。
気付くと小屋の前に戻ってしまっていた。
息が上がって膝をつくアウルは抱えているオレを降ろす。
「アウル、大じょ……」
アウルに声をかけようとしたオレの視界が一瞬ぐらついた。




