34.
ユラユラ体が揺れる。
目を開けたいのに瞼が重い。
喉に何かが引っかかって声も上手く出せない。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
重く感じていた瞼が軽くなってゆっくり目を開ける。
目を開けたのに真っ暗だ。
わかるのはこの匂い。
森の匂いだ。
「ん……あれ……オレ、どうしたっ……ケホッ」
喉が渇いていて咳き込みながら体を起こす。
周りを見渡すが暗くてよく見えない。
しかも、まだ森の中なのか周りには木しかなく、建物の灯りは見えない。
「落ち着け。落ち着け。何が起きたかちゃんと思い出せ」
自分に言い聞かせるように何度か深呼吸をする。
「昼間、イチゴくんと森の奥の岩山に魔法石を発掘に来たんだよな。……それで、イチゴくんがシフシさんに呼ばれて戻らなくちゃいけなくなって……。オオキミくんとキラピカくんが来るまで1人で発掘してたら、誰かに声を掛けられた後に背中に衝撃を受けて……オレ、気絶したのか」
「正解」
突然背後から声がしてビクッと体が跳ねる。
恐る恐る振り返ると木の影から男が現れた。
「おまっ……ケホッ、誰っ……ケホッケホッ」
大声を出そうとするが喉が張り付いてまた咳き込む。
「ほれ、コレ飲みな。あ、毒なんて入っていないただの水だから大丈夫だ」
渡された革袋の水筒に口を付け一口飲むと喉が少しだけ潤う。
その一口が呼び水となりゴクゴクと結構な量を飲んでしまった。
「ふぃぃ。潤ったぁ」
「ふはっ。この状況で渡された飲み物を素直に……クッ、ガブガブ飲みするなんて……お前面白いな」
ツボにハマったのか、その男は呆気に取られるオレを放置して暫く笑った。
「俺の名はアウルだ」
「オレは歩夢。……つか、そんな簡単に名前教えていいのか?……ってオレもかっ」
「ハハッ、アユムは面白いな」
アウルと名乗った黒髪褐色肌の男が、オレを誘拐した犯人なのだが……。
何故か秒で打ち解けてしまったようだ。
「まあいいけど。なあ、アウル、オレの腕輪知らないか?」
つけていたはずの腕輪が消えていた。
落としたのかな?
「ああ……あれは捨てたよ」
「ああ、捨て……はぁ?捨てた……って……何処に?」
和やかだった雰囲気は一瞬で凍りついた。
それまで見せていた笑顔は冷たいものに変わっていた。
「アレで連絡取られると困るからに決まってるだろ」
「な……んで……?」
たくさん水を飲んだはずなのに口の中がカラカラになったようで上手く喋れない。
「それは、依頼人にアユムを連れて来いって言われてるからさ」
ゴクリと唾を飲む音が耳に響く。
「だから、なんっ!」
突然オレの口を手で塞ぐアウルの表情が変わる。
森の奥に視線を移し鋭い眼差しのアウルに釣られて、オレもそちらに視線を移す。
が、どんなに目を凝らしてもオレには何も見えない。
「あー、もう見つかったかぁ」
「えっ、わっ」
素早く立ち上がったアウルに抱えられ、思わずその体にしがみついてしまう。
その直後、オレたちの元に近づく地鳴りが聞こえた。
それが複数の足音だと気づいた時には、オレを抱えたアウルはもう走り出していた。




