32.
「アユム様。大丈夫ですか?」
オレより50近く上に見えるお爺ちゃんに支えられながら立つ。
執事はオレがぶつかっても微動だにしなかったから、魔法でも使ったのだろうか?
「あ、ありがとうございます。迎えに来ていただいて助かりました」
「いえ、実はアワユキ王子のご指示で此方に参りました。ですから、そのお礼は王子に仰って下さい」
お辞儀をすると、逆に恭しくお辞儀をされてしまった。
「このエリアは私の管轄外ですが地図は頭に入っておりますので、このままご案内します」
「あ、ありがとうございます。……えっ、管轄外……?」
「はい。この城はエリア毎に担当する者を分けているんですよ。私の管轄は王子たちがいらっしゃる住居エリアになります」
執事さんの後について行き執務エリアに入る。
扉の前の警備兵は執事さんの顔を見るなり敬礼をして扉を開けたが、後ろにいるオレは腕輪を見せるまでやっぱり不審者を見るような目を向けられた。
「執務エリアにも執事さんはいるんですか?」
「おりません。厨房担当以外はここで働く者たちが陛下と王妃のお世話をします。それには毒などの危険物の混入を避ける意味もあるのですよ」
「はー、セキュリティーが厳しいんですね」
「そうですね。ただ、出来て困ることはないので問題はないようです。寧ろ、ご家族に紅茶を振る舞うと喜ばれていると言うものが多いですよ」
そんな話をしているうちに、2人の兵士が立つ豪華な扉の前に到着した。
「こちらが陛下と王妃がいらっしゃる部屋になります」
執事さんがノックをすると、扉を開き中にいた兵士が顔を出した。
執事がオレを連れてきたことを伝えると、兵士がオレだけを中に通した。
「お戻りの際はアワユキ王子がお迎えにいらっしゃるそうです。では私は失礼いたします。」
「あのっ、ありがとうございます」
執事さんにお礼を言って中に入った。
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「どうでしたか、王の執務室は?」
王様の執務室で王様と王妃様との緊張のティータイムが終わると、イチゴくんが迎えに来てくれた。
イチゴくんのエスコートは執務エリアを出て少し歩いたところでやめてもらって並んで歩く。
「うーん。もっと豪華なイメージがあったんだけど、意外に質素だった。あと、兎に角書類が多くて……王様って大変なんだな」
「国の政の最終決裁は王族が行うことになっているので目を通さなければいけない書類が多いんですよ。ただ、多方面からの確認を経たものですから、僕たちが確認するのは要点を纏めた書類になるので、あれでも少ない方ですよ」
これらの書類は内容によって王妃様とイチゴくんとオオキミくんに振られているが、それらはだいたい午前中には片付く程度の量らしい。
オレからしたら、あの書類の山を見るだけで吐きそうだ。
「あんな量、オレにできる気がしないわ」
ウゲェと顔を顰めると、何故かイチゴくんに嬉しそうな笑顔を向けられた。




