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31.

「クッソォ。イチゴくんめぇ、イケメンだからってやって良いことと悪いことがあるんだよっ」


長い廊下を歩きながら恨み節を吐く。

いまだに左耳の火照りが抜けない。

あんな王子みたいな行動されてもオレには対応できないんだよっ。


……って、イチゴくんは王子だった。



描いてもらった地図片手に何とか市民の出入りが許されているエリアに出る。

相変わらずテーマパークの様な賑やかさだ。

このエリアの隣に貴族専用の入城エリアがあって、そこから執務エリアに入れるらしい。

他にもルートはあり外部の人間に会わずに行けるが、少し遠回りになるらしい。

ピアス開けるのに手間取って時間のないオレはこっちのルートで行くことにした。

人混みを躱し、時にぶつかりながら端まで行き、そこにいる警備兵に腕輪を見せて通してもらう。

オレが目の前に来た時ちょっと不審者を見る様な目を向けられたが、腕輪を見るとビシッと敬礼をして通してくれた。


壁一枚隔たれた先は隣の賑わいはなく閑散としていた。

ここでも居合わせた貴族の方々に不審者を見る様な目を向けられたが、遠巻きにするだけで特に声をかけてくる様子はなかった。


ただ1人を除いては。



「これはこれは、アワユキ王子のペッ……御婚約者様じゃないか?」


ねっとりと絡みつくような声にビクッと体が跳ねる。

振り返るとやはりというか、やはりの人がいた。

腹の立つ言い回しをせずに普通に挨拶できないのか、このオッサンは。


「さ、サーペント侯爵様でしたよね」

「おおっ、覚えてらっしゃるとは光栄ですな」


絶対光栄とは思っていない視線を送る男を前に、やっかいな奴に会ってしまったとこのルートを使ったことを激しく後悔した。


「あの、今日はお嬢様は?」

「マリフェスなら今日は友人の茶会に招待されててね。君に会えるのなら連れてくれば良かったかもしれないな」

「は、はあ」


父娘セットじゃないなのは良かったけど、ニヤニヤする男と1分も会話をしていないのにドッと疲れる。


「あ、あの。オレ、急いでいるので、これで失礼ーー」

「まあ、良いではないか。場所を変えてもう少し私と話をしよう」

「っ!」


腕を掴まれてしまう。

脂肪だらけかと思ったら意外に力強くて逃げることができない。

一瞬イチゴくんの顔が浮かんだ。

けど、今仕事中だよな……。

躊躇っていると腕を強く握られズルズルと出口に引き摺られる。

腕痛いし、このままだとヤバい。

仕方がないが呼ぼう。


「あーー」

「サーペント侯爵」


イチゴくんを呼ぼうとした時、誰かが声をかけてきた。

振り返るとそこに居たのは、この国に来た時に案内してくれた執事さんだった。


「なんだ?」

「そのお手を離していただけますか」

「お前如きが私に命令だと?」

「私は王妃の指示でこちらの賓客をお迎えに参りました。申し訳ございませんが、お手を離していただきますようお願い申し上げます」


とても丁寧にお願いするとサーペント侯爵は舌打ちをしてオレを引き寄せる。


「ふんっ。そんな顔をしていられるのも今のうちだ」

「……ぇ……わっ」


オレにだけ聞こえるように言うと、執事さんにオレを放った。

執事さんに支えられ転ばずに済んだが、サーペント侯爵はこちらを見ることなく足早に城を出て行った。


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