30.
「歩夢先輩……いれますよ」
「ぁ……イ、チゴくん……まっ……て……やっぱり怖い」
「大丈夫ですよ。優しくしますから…ね」
「ぁ……あ……」
プチンッ
「いっ……たく……ない……」
「はい、お終いです」
イチゴくんの手が離れた左の耳たぶにそっと触れると、コロコロとした手触りがする。
「はい、鏡でも確認してください」
手鏡を手に取りオレとイチゴくんの顔を写す。
そこには昨日イチゴくんが買ってくれた赤い石のピアスが刺さっていた。
「ピアスを通すと同時に癒しの魔法を掛けたので痛みはほとんどなかったと思いますがどうですか?」
「うん、全然痛くなかった」
「良かったです」
ホッと安心するイチゴくんの様子からすごく丁寧にやってくれたようだ。
「エイヤーで開けてくれて良かったのに」
「だって、歩夢先輩めちゃくちゃ怖がってたから」
「……アハハ」
イチゴくんがこの部屋に来てすでに10分は経過した。
オレがビビりまくったせいだ。
「でも本当に1つで良いんですか?」
「うん、元々1個だけ開けようとしていたし」
「じゃあ、もう1つは僕がつけても良いですか?」
「いいも悪いも、コレ買ったのイチゴくんじゃん。断り入れる必要ないよ」
そう答えるとイチゴくんは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、僕は右につけますね」
そう言うとあっという間に右耳たぶにピアスを貫通させ装着した。
それを目の前で見てしまったオレは思わず「ヒギャッ」と悲鳴を上げてしまった。
でも、痛みもなく血も出ないでピアス開けられるこの世界は羨ましく思った。
「歩夢先輩。……これを」
「ん?」
オレの手を取ったイチゴくんはその腕に金の腕輪を嵌めた。
「なにコレ?」
「この後、父上と母上に会いに執務エリアに行くんでしょ?これはそこに入るための通行証のようなものです。エリア前にいる警備兵にコレを見せたら通してくれます」
「おっ、サンキュー」
「あと、通信もできるので何かあってもなくても連絡ください」
それは助かる。
これでうっかり迷子になっても助けを呼べる。
何もなかったら連絡はしないけどな。
「イチゴくんを呼び出す時どうすんの?」
「僕の名を呼んでください」
「名前?『イチゴくん』って?」
首を傾げ聞くとふっと笑って首を横に振ると、オレの左耳に唇を寄せた。
「"アワユキ"ですよ」
「ヒャッ」
オレは真っ赤になって思いっきり飛び退いてイチゴくんから距離をとった。
こ、コイツ、態とオレの耳にキスしやがった。




