27.
「もう、キミ兄様が魔法を掛けてかくれんぼするからすごく探しただよー」
キラピカくんは笑顔を膨れっ面に変え、オオキミくんに詰め寄った。
「ああ、悪い。アユムがスリに遭いそうになったから、少しの間、人避けをしてたんだよ」
「そーなんだぁ。じゃあ、しょうがないねぇ、ユキ兄様」
「うん。そうだね」
膨れっ面からまた笑顔に戻ったキラピカくんにイチゴくんも笑顔で返すが、オレにはその笑顔が少し引っ掛かった。
「よぉし、2人が帰ってきたから行こう。さっきのようにのんびりしてたら端まで行けないから、チャキチャキ行くぞー。おーっ!」
「おーっ!」
オレの掛け声は残念ながらキラピカくんしか返してくれなかった。
散策を再開して5分後。
買ったいちご飴を舐めながら歩いていると、ある屋台に目がいって歩みを止める。
「歩夢先輩、どうかしましたか?」
「ああ、うん。……ちょっとあそこの店寄っていい?」
3人はオレが指さした屋台に視線を向ける。
「オモチャ?」
「違うよ。アクセサリーだよ」
首を傾げるキラピカくんにイチゴくんが優しく教える。
「安っぽいな」
「うぐっ」
オオキミくん、容赦ない。
王族でもある3人から見たらちゃっちいオモチャにしか見えないよな。
チラッと見ると、オオキミくんとキラピカくんはやはり興味がなさそうだ。
「あー、やっぱりいいや。次行こーー」
「オオキミ。キラピカとそこで釣りして待ってて。僕は歩夢先輩とちょっと行ってくるから」
「わかった。キラピカ行くぞ」
「わーい、釣り釣りー」
オオキミくんはキラピカくんの手を引いて斜め前にある【メダカつり】の屋台に向かった。
「歩夢先輩、行きましょう」
「えっ?」
イチゴくんはオレの手を取りアクセサリーの屋台に歩き出した。
「い、いいのか?」
「はい。歩夢先輩、ずっとキラピカに付き合ってくれていたでしょ?だから、今度は僕が歩夢先輩に付き合いますよ」
「うん。行こ!」
オレはイチゴくんを引っ張って駆け足で屋台に向かった。
「わー。なんかすげぇ細工が凝ってるな。わっ、た、高いっ」
「えー、そうですか?」
「くっ、このお坊ちゃんめっ」
オレの世界で見かける路上販売のアクセサリーとは違っていて、アンティーク風なアクセサリーが陳列されていた。
そのどれも今のオレの残金では買えるものはない。
このいちご飴を買う前ならピアスの一個は買えたかもしれなかったのに……。
「冷やかしなら帰ってくれ」
店主にまで言われる始末だ。
と、視界の端に映ったピアスが気になって視線を移す。
濁りのない鮮やかな赤い石が付いた小さなピアスだ。
ピアスの前に移動してしゃがんで覗き込む。
「歩夢先輩?」
「この石、さ……なんかイチゴくんの瞳みたいだなぁ、って思ったけど、イチゴくんの瞳の方が綺麗だった」
見上げて笑うとイチゴくんはすごく驚いた顔をした。
その表情はすぐふわっと笑顔に変わり、今度はオレがすごく驚いた。
「歩夢先輩、ピアスホールあります?」
「いや、前に一回開けたことあったんけど膿んじゃってもうないよ」
「ほら」と左耳たぶに残るホールの痕を見せる。
手入れのできないオレにはホールが定着するまで頑張れなく、芯と痕だけ残った。
その耳たぶをイチゴくんが触れてきてから悲鳴をあげそうになって慌てて口元を手で塞いで我慢した。
「穴、僕が開けていいですか?」
「……えっ?」
驚くオレに耳たぶをモミモミしながらイチゴくんは続けた。
「昨日の賭け、のお願いです」
「……ぁぁ……」
ニッコリ笑顔を向けられたら「NO」とは言えない。
オレが小さく頷くのを確認したイチゴくんは、その赤い石が付いたピアスを購入した。




