26.
クックックッと笑うオオキミくんに今度はオレが呆気に取られた。
笑顔もそうだけど、オレのことを『お前』とか『アンタ』じゃなくはじめて『アユム』って名前で呼んでくれた。
「ちょっ、なんで呼び捨てなんだよ。オレの方が年上だろ」
「全てにおいて年上には見えないし俺の方が位が高い」
「グヌヌヌっ」
1ミリも否定できないのがまた悔しい。
でもなんか打ち解けた気もするから、まあいいか。
「あの……さ、兄上のことなんだけど」
「ん?イチゴくん?」
急に真顔に戻ったオオキミくんになんとなく背筋が伸びる。
「宴の時に『兄上は特別な人だ』と言ったこと覚えているか?」
「……ああ、そういえば」
ギリギリ覚えていた。
ホッとするオレに気付き刺すような目を向けられ「ウッ」と息を呑む。
「兄上の髪の色。父上とも母上とも違うことぐらいは一応気づいているだろう?」
「『一応』って言うな。それはちゃんと気付いてるっ」
真顔から馬鹿にしたような表情になってちょっと腹が立ったが、またすぐに真顔に戻った。
「あの色は数百年に一度王族のみに現れる特別なものだ。魔力も高い」
「へぇ、そうなんだ。イチゴくんって凄いんだな」
素直に感心すると小さく頷いた。
「その色を持つ王子が王になった代は飛び抜けて繁栄した……けど」
「……けど?」
「良いことだけではなかった」
「それって……」
オオキミくんは口を継ぐんだが、流石にこれはオレにも察することはできる。
どんなに幸せそうに見えても見えない何処かでは不幸せな人がいるように、繁栄の影にはそれと同じくらいの何かが起きたのだろう。
「だから……」と言いかけたオオキミくんは言うべきか迷っているようで目が泳いでいる。
「言っていいよ。今思ってることそのまま」
なんとなく想像できるし、たぶん……オレもそう思っているから。
「アユムには申し訳ないが、兄上には王家の慣例で魔力のない者ではなく、兄上を支えられる力のある者を妻に……王妃として迎えて欲しい。……例えそれが兄上の意に沿わない相手だとしても」
オオキミくんはオレを嫌っている訳ではないけど、イチゴくんの結婚相手としては同意はできないのだ。
本音を言えばオレもそう思う。
だから、「オレはイチゴくんの恋人のフリをしているだけだ」とオオキミくんにだけこっそり教えればきっと安心するだろう。
なのに、オレはどうしてもそれを言うことができなかった。
チクチク胸が痛み手で押さえるが、治ることはなかった。
オオキミくんもオレもそれ以上口を開くことはなかった。
それから少ししてーー
「ああ、ここにいたんですね」
「ただいまー」
イチゴくんとキラピカくんが笑顔で戻ってきた。




