22.
「ユキ兄様、キミ兄様、アユくんのお土産の"ぴよぴよまんじゅう"美味しいねー」
午前中、泣くほど叱られたキラピカくんは、あの出来事がなかったかのように楽しげにアフタヌーンティーのお茶請けに出したオレのお土産を食べてる。
ちなみにこの"ぴよぴよまんじゅう"は、我が家のお土産のド定番だ。
小鳥の形のこのお菓子は、白餡を薄皮の生地に包んでホワイトチョコでコーティングしている。
ホワイトチョコのパリッとした食感の後に白餡のホロっとした舌触りが最高に良くて、オレも大好きなお菓子だ。
「うん。すごく美味しいです。歩夢先輩、ありがとうございます」
「ああ、うん。喜んでもらえて嬉しいよ」
無表情のオオキミくんも口の端をちょっと上げて喜んでくれているようで、お紅茶を飲みながらニヤニヤしたら睨まれた。
「歩夢先輩、この後何かしたいことありますか?」
「うーん。城の外とか歩いてみたいかな。城の中はだいぶ回ったし」
昨日一昨日は、イチゴくんの時間が空いた時に城内を案内してもらった。
王様と王妃様の住居エリアと執務エリアは立ち入り禁止なので、それ以外で立ち入って良い場所を回った。
昨日はイチゴくんの部屋に案内してもらったが、オレが充てがわれている部屋より広くて豪華絢爛だった。
さすが王子様だ。
あと、市民が自由に立ち入れるエリアにも行ったが、テーマパークみたいに賑やかだった。
「だからそろそろ外に出たいなって思ってるんだけど」
そう言うと、キラピカくんの目が輝いた。
「城外にお出かけなら、明日がいいよ!ボクも一緒に行きたいっ」
「明日?」
「明日は市がある。キラピカはそれに行きたいんだろ」
「うんっ」
城の正面に位置する街では、月に一度、市が開かれ、そこでは普段出ない遊びや食べ物の屋台が出店するため、街に住む子どもたちの楽しみらしい。
キラピカくんも数回しか訪れたことがなく、オオキミくんの話では毎月この日が近づくと「行きたい」と騒ぐそうだ。
とはいえ、王子様がホイホイ行く場所じゃないし、行ったら行ったで騒ぎになるから滅多に許可が下りないと。
「向こうで言うお祭りみたいなものか?」
「はい」
「なら、オレ行ってみたい。みんなで」
「ええっ⁉︎」
オレの発言にキラピカくんは目を更に輝かせ喜んだが、イチゴくんとオオキミくんは目を見開いて驚いた。
「あ、あの、先輩ーー」
「お祭りならみんなで行ったほうが楽しいじゃん。イチゴくんも行くのは久しぶりだろ?ならみんなで行って楽しもうよ」
オレの提案にイチゴくんは珍しく困った表情をした。
「でも……」
「いいと思いますよ。みなさんで行って来なさい」
振り返ると王妃様がいた。
「遅れてしまってごめんなさい。まだ大丈夫かしら」
「はい。あの、母上ーー」
王妃様はイチゴくんの発言を手で制し、キラピカくんの隣に座る。
出されたお茶を一口飲むと口を開いた。
「異世界から来てくださったお客様を城の中に閉じ込めてはいけません。この世界を知ってもらうには市は一番良いと私は思いますよ。折角ですし、みなでアユムさんを案内して、楽しい思い出を作ってきなさい」
「はいっ。お母様」
元気よく返事をするキラピカくんに王妃様は優しく微笑みながらのその頭を撫でる。
「アワユキとオオキミは?」
「……はい」
「……わかりました」
2人とも渋々了解した。




