20.
「1時間だけですよ。1時間経ったらお勉強ですからね!」
「はーい」
「貴方もですっ」
「……はい」
キラピカくんがオレと遊ぶと言い出すと、彼の家庭教師に何故かオレまで叱られた。
キラピカくんはまだ8歳だが、すでに高校レベルの授業をしているらしい。
頭の回転が無茶苦茶早くて、朝食後にカードゲームをしたが見事に惨敗した。
それでもイチゴくんやオオキミくんには勝てない様で、そのせいもあってか「もっと遊びたいっ!」と駄々をこねた。
結果、迎えにきた家庭教師にオレまで叱られるというとばっちりを食らった。
でも、1時間だけ許可してもらうとキラキラと目を輝かせて喜んだから、まあ今回はいいかって気持ちになった。
「で、何して遊ぶ?」
「コレッ」
「ああ、バドミントンか」
「うん。ユキ兄様とキミ兄様はカードゲームは遊んでくれるんだけど、こういうのは一緒にやってくれなくて、ずっとやってみたかったんだぁ」
嬉しそうにラケットをオレに渡す。
こうして見るとやっぱり子供なんだな、なんて微笑ましくなる。
「オレ、中学の時部活でやってたからそこそこ強いぞ」
「えーホントぉ?」
信じてない様でケタケタと笑われる。
ふふっ、油断しているのも今のうちだ。
オレは相手が女子供でも容赦しないからな。
グリップを強く握った。
「わー、またやられたぁ」
「ふふふっ、どうだオレの実力」
カッコ良くポーズを決めるオレにキラピカくんは頬を膨らませる。
ふふっ、可愛い奴め。
「もう一回」
「もう一回って……もう1時間経つからおしまい」
「やだっ!アユくん勝ち逃げはズルいっ」
目を吊り上げてツノを生やした家庭教師がすぐ近くにいるにも関わらず、キラピカくんの目には入っていない様で止まらない。
家庭教師のオレを見る目に刺されそうだ。
「あと一回だけだぞ。先生がまっててくれてるんだから、終わったらちゃんと勉強するんだぞ」
「うんっ、わかったぁ」
嬉しそうにラケットを振っているところ申し訳ないが、時間も時間だしさっさと終わらせる。
そう思って始めた最後の一回は、意外にラリー戦になった。
この短時間でキラピカくんがそれだけ上達したということだが、元バドミントン部のオレとしては負けるわけにはいかない。
何回目かでチャンスが来てちょっと嫌なコースに打ち込むと、予想通りキラピカくんは慌てた。
それでもなんとか打ち返した様だが、スピードが今までの比ではないくらい速い。
顔面に向かって来たシャトルにラケットを当てる。
跳ね返るはずだった。
「えっ」
気付くとシャトルがラケットを突き破ってオレの目の前に飛んできていた。
あ、死ぬーー
その予感は外れ、寸前でシャトルがパンっと破裂した。
しかも数センチの至近距離だったにも関わらず、破片がオレに当たることはなかったが、ものすごい風圧はあってオレは吹っ飛ばされた。
背後は薔薇の茂みだ。
やっぱり、死ぬーー
その予感も外れ、オレは逞しい腕に受け止められた。




