19 3日目
目覚めると相変わらず……。
「やっぱ天井高えな……」
昨日と同じ様にゴロゴロ転がってベッドの淵まで移動した。
今日は落ちずに足からベッドを降りた。
部屋を横断して洗面所に行き顔を洗う。
フカフカのタオルで顔を拭きながら、昨夜、部屋までイチゴくんに送ってもらった際のことを思い出す。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
何となく重苦しかった空気は部屋に着く頃にはいつも通りに戻っていた。
だから初日から疑問に思っていたことに聞いてみた。
「この世界ってさ中世のヨーロッパみたいだけど、照明はあってシャワーもあるし、トイレなんてウォッシュレットだ。これ、どうなってんの?」
魔法はあるのに電気や下水が存在しないように見えるこの世界が、何故こんなに快適なのかすごく気になる。
「ああ、それはですね。魔法石を使ってるんですよ」
「魔法石?」
思わず首を傾げる。
「魔法石とは魔力を溜め込むことができる石のことです。この石に魔力を注ぎ込んで、照明やシャワーのエネルギーにするんですよ。これがあれば魔力を持たない歩夢先輩でも照明を点けたりシャワーを出すことやトイレの水を流すことができるようになるんです。下水に関してもこの魔法石で浄化してます」
「へぇ」
「もともと異世界から来た王妃のために作られたものなんです。ウォッシュレットは先代の王が気に入って付けたもので母上も気に入っているんですよ」
オレもウォシュレットは好きだから、この世界でも使えてちょっと嬉しい。
「魔法石はこの世界のいつくかの鉱山で採掘ができるだけでなく、小さいものならその辺でも採取できるんですよ」
「マジで?」
「あーでも、向こうの世界に持っていくことができないんです……」
そう言ってしょんぼりするイチゴくん。
そんなにガッカリすることか?
「それはしょうがねぇんじゃないか。オレも別に持って帰りたいとも思ってないし。ただ一度見てみたいかなって」
魔法石といってもただの石だ。
向こうの世界には持って帰って何が楽しいのかわからない。
でも、折角の機会だから見てはみたい。
「じゃあ、歩夢先輩が明日にでもご案内しますね」
「おう、頼んだ」
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そんな約束をしたもんだから、楽しみすぎて今日は早く起きることがでした。
しかも、目覚めが最高に良い。
コンコンコン
洗面所から出るとノック音がした。
「はー」
「アユくん、おはよー」
「あ、キラピカ。返事が聴こえてから入らないと」
オレの返事を待たずにキラピカくんが部屋に入ってきて、それを追うようにイチゴくんも入ってきた。
「ごめんなさーい。えへへ」
キラピカくんは可愛く謝るが、これ全然反省してないな。
オレは諦めてため息をつく。
「2人ともおはよう。で、朝からどうしたの?」
「あ、先輩、おはようございまーー」
「アユくん。みんなで朝食たべよっ」
キラピカくんは楽しそうにイチゴくんの言葉に被せて言った。
曇りなき眼でオレの手を取る。
「それでね。ご飯の後に一緒に遊ぼっ」
「えっ、うぉっ……わ、わかったから……手を……うぇ」
オレの手を掴んでブンブン振るもんだから、空きっ腹のオレはちょっと酔った。