14.
ストロベリー王国の2日目の午後は、イチゴくんの家族とアフタヌーンティーだ。
父親の王様は公務があるから、出席するのは母親の王妃様と兄弟だけらしい。
おそらく昨日謁見の時に見た金髪美女と王様の隣で立っていた赤毛の2人だろう。
とりあえず、今夜の宴が終わればオレは自由だと言われたから頑張ろう。
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「こんにちは。よく来てくれました」
イチゴくんのエスコートで庭のバラ園を少し歩くと開けた場所に出た。
そこでイチゴくんの家族が待っていた。
オレはイチゴくんが用意してくれたヒラヒラの服を着て、昨日とは違う緊張をしていた。
「歩夢先輩、こちらが僕の母です」
「ははははははじめましてっ」
「ふふふっ、ここには私たちしかいないのだからそんなに畏まらなくてもいいのよ」
金髪美女のイチゴくんのお母さんはそう言ったけど、金髪美女というだけでもう緊張しかない。
「こちらは僕の弟のオオキミとキラピカです」
「はじめましてっ」
「………」
今度は噛まずに言えたけど、オオキミくんと呼ばれた大きい男の子は無言で会釈した。
その態度にちょっとムッとすると、隣の小ちゃい男の子がオレの手を掴んだ。
「こんにちは。ボク、キラピカといいます。アユムくん……えと……ふ、普通だね」
「はは、どうも」
キラピカくんはなんとか捻り出した『普通』でオレにニッコリ笑いかけてくれたが、オレの笑顔は引き攣った。
なんだろう。
失礼な兄弟だな。
「えっ、王妃様はオレと同じ世界の出身なんですか?」
「そうよ。私、フランス出身よ」
「父が留学中に母に一目惚れをして猛アタックしたらしいです」
「交際を始めてすぐ私もバカンスでこの世界に連れてきてもらった時は驚きました。でも、ここはとても良い国で……とても気に入りました」
マジか。
しかも一目惚れって、イチゴくんもオレに一目惚れと言ってたから血は争えないな。
「ストロベリー王国の王子は18歳になると、異世界に行き異文化を学びつつお嫁さんを探すんです」
「ほう」
「留学先は占いで決められ、今回、僕の留学先は先輩のいる日本になったんです」
占いで行き先を決めるってオレの世界だと胡散臭く見られるけど、魔法の世界だとなんかカッコいいな。
「で、占うってどうやってすんの?水晶とか何か魔法道具とか使って?」
「はい。サイコロですっ」
んっ?
「えと、今なんて?」
「サイコロです。先輩の世界でいう6つの目がついたアレです」
あの1から6まで数字の目があるアレですか。
アレって占いか?
「ち、ちなみにどうしてサイコロで占うのかな?」
「20代くらい前の王が留学中にサイコロの目を予想する遊びにハマったらしいんです。カップに入れて『丁か半か?』ってやる遊びなんですけど知ってますか?それで、その王の代から行き先が書かれたサイコロを振って決めるようになったんです」
イチゴくんは楽しそうに話すけど、それ、ギャンブルだよな。
チラッと王妃様を見ると困ったような顔で笑っていた。