10.
街の中心に降り立った馬車から降りると物々しい出迎えを受けた。
RPGやファンタジーの世界でしか出てこないような騎士やメイドが左右に並んいて、オレたちが馬車から降りるタイミングでボワッと赤い絨毯も現れた。
その絨毯の上をオレはイチゴくんにエスコートされ歩く。
扱いはまるでお姫様だ。
入り口で優しそうな執事に迎えられると、イチゴくんは着替えをしてくるとシフシさんを連れどこかに行ってしまった。
オレは出迎えてくれた執事さんに貴賓室に連れていかれた。
「はへー」
見上げた天井は体育館並みに高かった。
貴賓室に案内されソファーに座るや否やメイドさんが来てお紅茶とケーキやクッキーを目の前に並べた。
色々驚きすぎて口の中がカラッカラだったオレは、とりあえずお紅茶を一口頂くが緊張で味が全くわからない。
今は口の中を潤せればい良いけど、イチゴくんが居ないだけでこんなに心細いとは。
結局、お紅茶は一口目以降、喉を通らなかった。
ガチャ
扉の開く音が聞こえて振り返ると、扉付近で待機していた執事が扉を開けていた。
「イチーー」
「先輩、お待たせしました」
入ってきたイチゴくんは白地に金の刺繍が入った衣装を着ていた。
そして、その衣装に付けた真っ白なマントの内側は赤くて派手だったが、その姿はまさに王子様だった。
オレの向かいに回り優雅にソファーに座るイチゴくんにメイドさんがサッとお紅茶を出す。
「先輩?口開けっ放しで、今にも涎が垂れそうですよ」
「じゅる。あ、いや……」
慌てて手の甲で口の端を拭う。
幸い涎はまだ垂れていなかった。
ふっと笑ったイチゴくんは優雅な仕草でお紅茶を飲んだ。
「アワユキ王子。10分後に王との謁見となりました」
「わかった」
後から入ってきてイチゴくんの後ろに立ったシフシさんが、イチゴくんに耳打ちする。
そんなシフシさんも正装していて、そこにはオレの知らないイチゴくんがいた。
いつからだ?
緊張感のない大きな扉を抜けてから?
いや、あのクローゼットの中の真っ白な空間に入る時からもう雰囲気は変わっていた気がする。
急にイチゴくんが遠くに感じて、イチゴくんが何か話していたけどオレの耳には届かなかった。
それから少しして迎えに来た騎士に案内され王様に会いに向かった。
もちろん、イチゴくんにエスコートされて、だ。