第2話 「勝利へのメソッド」
デュエルには長い歴史がある。
デュエルが登場した初期は、巨大なマシーンでデュエルを行っていたそうだ。
その後、「デュエルディスク」と呼ばれる、腕に装着してデュエルを行う装置が開発され、いつでもどこでもデュエルが出来るようになった。
それから幾年の月日が流れ、さらなる改良が重ねられた現在では、スマホのデュエル用アプリを起動し、スマホを専用のアームバンドに装着することで、スマホでデュエルが行えるようになった。
またアームバンドには、デッキホルダーも装着できるようになっている。
もちろん、デッキのカードを直接ホルダーに入れることも可能だが、事前にデッキをデータとしてスマホに読み込ませておくことで、スマホとホルダーが連動し、デュエル開始時に非実体のカードがホルダーに自動的にセットされ、そのまま使用することができる。
これにより、カードゲームとしての楽しさはそのままに、今までよりさらに快適にデュエルを楽しめるようになった。
これが、「俺の知る世界」だ。
◇◇◇
ついに、チャンピオンとのデュエルが始まった。
「そういえば、君の名前聞いてなかったね、チャレンジャー?」
シンドウが口を開く。
「英塚 雄介です。」
「オーケー雄介くん、僕はデュエルチャンピオンのシンドウ。よろしくね。今回のデュエルだけど、ハンデとして君に先攻を譲ろう。それでいい?」
ーーなめられたものだ。
このデュエルというゲームにおいて一番重要なのは、いかに自分の布陣を素早く整え、自分の「得意」を相手に押し付けられるか、という点だ。
だから、「先攻を取る」という行為は布陣を迅速に整える上で、とても重要な事であり、それによって勝負が決まると言っても過言じゃない。
例えそれがデュエルチャンピオン相手でも同じ事だ。
それをわざわざ譲るということは、こいつ相当自信があるのか?
いずれにせよ、俺は全力を尽くすだけだ。
「はい、よろしくお願いします!」
今はこの状況を楽しめ、俺。
◇◇◇
[TURN1 PLAYER:YUSUKE]
最初の手札はお互いに5枚。
先攻からターンが始動する。
「俺のターン、ドロー!」
俺は勢いよくデッキの上からカードを1枚引き、手札に加える。
まずはーー
「俺は、ミナライ・ヒーローを召喚!」
<ミナライ・ヒーロー ATK:800>
非実体のカードを空中に置くように、手札のモンスターを場に出す。
すると、俺たちの目の前にモンスターの立体映像が現れた。
「ソリッドビジョン」と呼ばれるこの立体映像表示システムは、モンスターやカードを迫力ある立体映像で表示させ、白熱したデュエルを実現させる。
「攻撃力800・・・ 他のモンスターと比べればかなり攻撃力が低い。
でも、それだけじゃないんでしょ、雄介くん?」
普通に考えれば、攻撃力の低いモンスターを出すのは愚策ともいえる。
しかし、自分のターンのみ使える魔法カードや、自分のターンにセットすることで相手のターンに発動できる罠カード、といったカードを組み合わせることで逆転の可能性は十分にある。
・・・のだが、現在の俺の手札に打開策はない。「手札事故」というやつだ。
とりあえず、今出来ることはーー
「・・・1枚カードをセットする。先攻はモンスターで攻撃できないから、これでターンエンドだ。」
ターンエンドを宣言したその時、周りからひそひそ声が聞こえ始めた。
ーーー攻撃力800とか、雑魚かよ。
ーーーデュエルチャンピオンなめてんじゃないの?
ーーーこれは勝負あったわ。
ーーーがっかり。せっかく良いデュエルが見れると思ったのに。
そしてシンドウ本人も口を開く。
「なるほど、雄介くん。どうやら君の手札は事故っているようだね。運が悪かったなぁ。なら、このターンで決着をつけさせてもらうよ!」
ーー完全に余裕ぶっこいてる。
そりゃそうだろう。攻撃力はたったの800。セットされたカードも、発動する前に破壊してしまえば問題ない。完全にこちらの劣勢だ。
ーーどうやらこいつら、ヒーローの恐ろしさをまるで分かっていないようだ。
◇◇◇
[TURN2 PLAYER:SHINDO]
「では、オレのターン! ドロー!」
シンドウも勢いよくカードをドローする。
「まずは、シモベ・ドラゴンを召喚!」
<シモベ・ドラゴン ATK:1000>
「続いて魔法カード、「進化」を発動!
場にいる自分のモンスター1体を選び、進化させる!」
ーー魔法カード、「進化」。
場にいるモンスターに、「進化モンスター」と呼ばれる特殊なモンスターを重ねることが出来るカード。こういった特殊なモンスターはEXデッキと呼ばれる、別のデッキに入れなければならない。
この「進化」を使って、強力な進化モンスターを出していく。
これが最近主流になっているデュエルの戦法だ。
...ちなみに、俺のデッキに「進化」のカードは入っていない。
◇◇◇
「オレは場の<シモベ・ドラゴン>を進化させる!
竜のシモベよ! 今こそ進化し、シモベを統べる竜となれ!
進化召喚!
飛び立て! ジェネラル・ドラゴン!」
<ジェネラル・ドラゴン ATK:2300>
「この瞬間、<ジェネラル・ドラゴン>の効果発動! こいつは召喚された時、部下である<シモベ・ドラゴン>をデッキ・手札から任意の数だけ場に呼び出すことが出来る! サーヴァント・コール!」
おっと、こいつはまずい。
同名のモンスターは1種類につき3枚までデッキに入れることが出来る。
シモベの1体は既にジェネラルに進化しているから、残りはーー
「現れろ! 2体のシモベ・ドラゴン!」
<シモベ・ドラゴン ATK:1000>
<シモベ・ドラゴン ATK:1000>
これは本格的にやばい。
このまま攻撃を食らったら、俺はーー
「まだオレのターンは続くぜ!」
...今、あいつなんて言った?
「魔法カード、「三竜の呼び声」を発動!
このターン中、「ドラゴン」モンスターを3体以上、召喚できた時に発動できる!
手札にある「ドラゴン」モンスター1体を特殊召喚する!
俺はツインヘッド・ドラゴンを特殊召喚!」
<ツインヘッド・ドラゴン ATK:1000>
..終わった。
シンドウの場にはドラゴンが4体。攻撃力の合計は5300。
<ミナライ・ヒーロー>の攻撃力で受けるダメージを多少軽減できるとはいえ、残りのLP4000を超えてしまっている。
「バトル! まずは<シモベ・ドラゴン>で、<ミナライ・ヒーロー>を攻撃!」
シンドウの攻撃の合図と共に、立体映像上の2体が激しくぶつかり合う。
そして残ったのは、攻撃力が高い<シモベ・ドラゴン>だった。
「<ミナライ・ヒーロー>、撃破!
さらに雄介くん、君には攻撃力が越えている分、200のダメージを受けてもらう!」
「ぐっ..!」
英塚 雄介 LP4000→3800
「まだ他のドラゴンの攻撃は残っている! もう1体の<シモベ・ドラゴン>でーーー」
ーーこの時を、待っていた。
「この瞬間! 破壊された<ミナライ・ヒーロー>の効果発動!」
「な!? このタイミングで!?」
「<ミナライ・ヒーロー>は破壊された時、敗北という経験を糧に成長し、「新たなヒーロー」へと姿を変える!」
「新たなヒーローだと!?」
「出てこい! サスライ・ヒーロー!」
<サスライ・ヒーロー ATK:2100>
「なるほど、ヒーローを強化するためにわざと破壊させたのか...!」
「シンドウさん、貴方が「進化」で勝利をつかもうとする度に、俺のヒーローは強くなって立ちふさがる! そう簡単にやられはしませんよ!」
「厄介だねぇ...ヒーローってやつは!」
「ドラゴン」と「ヒーロー」、両者の戦いはまだまだ終わらない。
どうも、CHACHAです。
ずいぶんと執筆に時間がかかってしまった...
さて、今回からデュエルが始まりましたが、分かりやすくなっていたでしょうか?
ちなみにこの「デュエル」は、基本的には遊○王のルールをベースに、他カードゲームのルールを取り入れたものになっています。
質問等があれば、ルールについても細かく紹介していきたいと思ってます。
それでは、次回の投稿も気長にお待ちください。
(ちなみに、こっから先のデュエル展開ですが、まだ全部は決まってません。結果は決まってますが。)