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97泊目 あの日の告白

「このままで良いからさ、聞いてほしいことがあるんだ。」


 言葉を発さずに頷くと、ミュウは言葉を続けた。


「あのね、おじさまとおばさま……ユートのお父さんとお母さんは、アタシとニュウ、それとユートを守るために魔物と戦ったときに強大な魔力を使って、まるで自分たちを贄にするように亡くなったの。二人の命を掛けて発動する魔法……それを使ったことによって、魔物も、そしておじさまとおばさまもどっちも消えてしまった。今までのユートの記憶の中では、平常時の魔法事故で亡くなったってことになってるけど、それは偽りの記憶。アタシたちを救ってくれたのは、おじさまとおばさまの魔法だったんだよ。あの大魔法がなければ、アタシたちは全員死んでた」


 ミュウはそう言うと、まだ続きがあるんだ、ごめんね、と零して言葉を続ける。


「魔法があるからユートがいるの。そしてユートはおじさまとおばさまの血を継いで、魔法の才能が立派にあるんだよ。でも、ユートはアタシとニュウにひとつのお願いをしたんだ。ユートは自分の中に、両親を奪ってしまった魔法の力があるのが耐えきれなくてアタシとニュウに自分の記憶を消すように言いつけたの。あの時のユートも、もうこんな思いは懲り懲りだ、魔法なんてなくなって仕舞えばいい!って叫んでたよね」


 ミュウからの言葉で、ひとつひとつの記憶が呼び覚まされていく。


「だから、アタシとニュウはそれに従った。2人がかりでユートの記憶を書き換えたの。えへへ、すっごい大変だったんだからね!だからね、アタシとニュウも実は魔法は得意なんだ、こう見えてもね。でも、ユートのためを思って、二人で魔法を捨てて武器での戦闘ができるように必死で練習したんだよ。……ひとつだけわかっていてほしいのは、おじさまとおばさまはどうしてもユートを守りたかったってこと。それは自分の命に換えてでも、ね。だからさ、ユート。魔法を嫌わないでほしいの。アタシたちを救ってくれた、そしておじさまとおばさまが最期に託してくれた奇跡の力をーー」


 そう言い終わると、ミュウは両目から大粒の涙を溢しながら泣いた。

 それにつられて、頭の中で様々な過去の出来事を思い出していた俺も一緒に泣いてしまった。

 今までずっと憎んできた対象だったはずの魔法というものが、今ではとても心強く感じる。

 まるで俺自身を見守ってくれているような、そんな暖かさすら感じていた。

 心の中がぎゅっとなったのは、俺に残る魔力が目覚めた合図だろうか。

 俺とミュウは、涙を拭うことすらも忘れて、ただひたすらに泣いていた。

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