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83泊目 美味しい団欒

 今日のディナーメニューは6種。

 サメと白身魚のタルタル、赤牛のステーキ、オイゲン特製気まぐれサラダ、デザートにはクロノスアイスのシャーベットが待っている。

 そして魔物料理であるゴブリンブイヨンと卵のスープに、アイ・デューサの超新鮮刺しだ!

 今、テーブルの上にはデザートとアイ・デューサ以外が出揃っている。

 どれも美味しそうに湯気を立てて、俺たちの胃袋にダイブするのを待ち侘びているようだ!

 オイゲンにアイ・デューサは? と尋ねると、


「あいつは新鮮さが命なんだ。氷の結晶を使ってダンジョン内で急速冷凍処理をしたんだが、今はその解凍をしているところなんでちょいと待ってくれ」


 との答えが返ってきた。

 超新鮮刺し、という響きだけでもう美味そうなのが伝わって来る……!!

 解凍されるのを楽しみにして、まずは目の前に並んだ御馳走を楽しむとしよう!


「サメって初めて食べたんですけど、こんなに甘みがあるんですね。レモンの風味がさっぱりとしていて香草との相性もばっちりです! 火を入れずに食べる海鮮は美味しいですねぇ! 今までの私ならサメなんて怖くて、絶対に食わず嫌いをしていました……。なんだか今回のダンジョン探索で物凄く逞しくなった気がします……!」


 二層になった円形のタルタルにスプーンを入れながら、エルは恍惚とした表情で口を動かしている。


「こっちのステーキも最高ー!! ミディアムレアの焼き加減もちょうど良いねぇ。塩胡椒で食べると濃縮されてた旨味が全部口の中に溶けていくよ〜。オイゲンが焼くお肉って、なんで全部こんなに柔らかくなるんだろー?」


 ミュウはテーブルの中央の大皿で堂々とした存在感を放っているステーキにフォークを伸ばす。

 自分の皿にステーキが置かれたと思ったらすぐに消え、また大皿のステーキに手を伸ばす、といった所作をかれこれ4回は繰り返している。

 早く自分の分を確保しないと、ミュウに全て食べ尽くされ兼ねない!

 俺は自分の分のステーキを手早く取り皿に取り分けた。


「サラダも全ての野菜がみずみずしくて美味しいですわ。カリカリのベーコンとの相性も良いですわね! このドレッシングは果実ベースかしら……? クロノスアイスの甘さも感じられますわ。これなら生のお野菜も、いくらでも食べられそうですわね」


 まるで大食いの草食動物かのようにサラダの葉っぱを食べ続けるエル。

 色とりどりの生野菜にこんがりと焼かれたベーコン、オレンジと白のコントラストが綺麗なダブルドレッシングは、見ているだけでも食欲を刺激する!!


「ゴブリンのブイヨンってどんな感じなんやろ? って思ってたけど、こんなに美味しい出汁が出るん!? 信じられへん!! めっちゃ美味しいやん……!! 魔物って全部こないに美味しいの? だとしたら今まで口にしてこなかった人生を恨むわぁ〜……。ユートたちはこーいうやつをダンジョンの中でしょっちゅう食べてたやんね? 羨ましい〜! ウチもついていけば良かったわ……」


 魔物料理を初めて口にしたクロエは、あまりの美味しさに感激を露わにしていた。

 ふっふっふ、そうだろうそうだろう……! 魔物料理は実は美味い。めちゃくちゃ美味い。騙されたと思って一口食べたら、もうその魅力に取り憑かれること間違いなしだ! クロエのその感激も、心の底から共感できるぜ!!


 テーブル上に並んだ料理を美味い美味い、やっぱり仄暗いダンジョン内で食べるのは違う、と皆で感動しながらディナーを楽しんでいると、オイゲンがクローシュを被せた大皿を持ってテーブルの中央に置いて言った。


「いいかお前ら、よーく見とけ! これぞ本日のメインディッシュ! アイ・デューサの超新鮮刺しだッッッ!!!!」


 その宣言と共にクローシュが上に持ち上げられた瞬間、俺たちは言葉を失った。

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