82泊目 ゲテモノ耐性有り。
「へ〜、魔物かぁ〜。ウチ、初めて食べるわぁ。今日は珍しいディナーやんね」
「……魔物だぞ? 驚かないのか?」
「うん。だって食べれるんやろ? だったら全然食べるで? どんな味するんやろなぁ、楽しみや〜」
魔物料理を目の前にしても、クロエはニコニコとしてスプーンを握りしめている。
そうだ、忘れてた。クロエはいつだって食べることに全力なんだ。
魔物が来ようが異国の得体の知れない食材が来ようと、それが食べられるとわかったなら何の抵抗もなく食べる。そういった悪魔の胃袋と味覚を持つ人間だった……!!
「クロエ、ほんとに何も思わないの? 魔物だよ? アタシたちが克服するまでに何回も葛藤した食材だよ……!?」
ミュウも不安そうにクロエを上目遣いで見つめていた。
「だから〜、大丈夫やって! むしろめっちゃ興味あるもん! ほら、冷めないうちにはよ食べよ食べよ!」
「ガッハッハ! 安心しな、俺様がスペシャルデリシャース!! に仕上げてやったからよ。美味しくないわけがないからな!」
魔物を食べる、と言って少しクロエを驚かせて楽しんでやろう、という悪戯心もあったから、このリアクションは少し残念だ……!
まぁでも、こうして魔物料理の良さをわかってくれる同志が増えることはありがたいことだ。
なんだかんだで魔物を食べる、ということに未だに抵抗意識と背徳感が心の奥底では渦巻いている。
共犯者が増える、ということはとても甘美であり心強いことだ。
「それじゃ、ダンジョンからの帰還&お宝の入手、そしてエルの目的達成を祝して……乾杯!!!!」
俺が改めて音頭を取ると、全員のジョッキとグラスが音を立ててぶつかる!
そして、各々がズラリと並んだオイゲンの自信作に手を伸ばし、食堂は盛大なパーティー会場となったのだった。




