75泊目 それはとても不思議な球体で
「うーん……。魔具だとしても、文献ですら見たことないですねぇ」
エルは球体をぺたぺたと触って確認しているが、それが何なのかはわからないようだった。
「ただ、マナは豊富に含まれているようですね。精神力を少しずつ吸収する作用もあるみたいです。精神力を与えることによって何かの効果が発現するのかな?貴重なものには間違いないと思いますね。鉱物でもないようですし、きちんと調べるには鑑定所に持っていくしかないかもです……」
「なるほど、とりあえずコイツも持ち帰ってみてから改めて調べてみるか!」
お宝の袋詰めもあらかた終わり、大荷物になった俺たちは、急いで祭壇の間を後にすることにした。
「ワープポータル、もうなくなっちゃったらどうしようー! この荷物を持ったまま戦闘しつつ地上に戻るのは大変そうだぁ……」
大きな袋を抱えたミュウが焦るように早足になる。
「このお宝を売り捌いて、世界中のスパイスをかき集めることを想像するだけで涎が出てくるぜ! あ、少し魔物肉も持ち帰った方が良いか?」
「オイゲン、それはとても魅力的だが、いかんせん今は既に重量オーバーだ……! 荷物を置いたらまた肉を狩りにこないか?」
賛成だ! と指を鳴らすオイゲンとガッツポーズを決める俺を見ていたのか、後ろの方から呆れたような声が微かに聞こえてきた。
「嘘ですわ……この人たち、地上に出ても魔物を食べる気なんですわ……」
その声は聞こえなかったことにして、俺はまた新しい魔物料理に想いを馳せていた。




