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70泊目 自己犠牲≠エゴイズム

「ニュウさんは、バカです……!」


 エルが発した悲痛な叫びにふと我にかえると、エルは横たわったニュウに縋りつきながら大号泣をしていた。


「こんな……っ、ボロボロになってまで、私を…っ、私たちを……救ってくれるなんてて…」


 そして嗚咽を漏らすエルの頭をミュウの手が優しく撫でる。


「ニュウが大魔法で魔法を暴走させちゃうの、今回が初めてじゃないんだよね。この子、周りのピンチには人一倍敏感で……。それでいて自分のダメージには鈍感だから姉としても困っちゃうのよ」


 ミュウはえへへ、と少し悲しそうな顔で微笑む。


「でも、大丈夫。アタシの中に残っている魔力で暴走も鎮静化できたし! ほんっと、アタシに頼りっきりなんだからニュウは!」


 そう言いながらミュウはニュウにペンダントを掲げ続ける。

 ミュウとニュウの2人には多少の魔力が宿っていることは知っていたが、それは微々たるもので大魔法を行使できる程ではない、と聞いていた。

 けれど、とにかく今はニュウが、そしてここにいる全員が無事だというその事実を改めて噛み締める。その途端、安堵からかへなへなと腰が抜けてしまった。


 すると端の方で何かをしていたオイゲンが手に何かを持って、こちらにやってきた。


「坊ちゃん、ホラ、これを飲みな」


 渡されたのは水とダンジョンによく生息しているヒカリゴケだ。


「ヒカリゴケ……? なんだってこんな物を? というか、俺には必要ないからこれはエルとニュウに飲ませてやってくれ」


 と、俺がそう言い終わる前にオイゲンはエルとニュウにもヒカリゴケを手渡していた。

 ヒカリゴケは魔力の鎮静を促す植物として知られていて、それを煎じて飲めば身体に溜め込みすぎた魔力を発散できる。魔法暴走時によく使われるものだ。

 微々たる魔力しか持たない俺にとって、全く必要のないアイテムなんだが……。

 まぁ特に飲んでも害はないものだ。

 口に入れて一気に水を飲み干すと、なんだかぼんやりとした頭もスッキリとした気がする。

 知らないうちに魔素でも溜め込んでいたのか?

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