69泊目 現実と非現実の狭間で
魔法暴走……だと??
ぼんやりとした意識をはらうように、俺は大きく頭を振って改めてニュウの方を見る。
いや、俺が知っている魔法暴走というのは表出した魔力そのものが暴走をしたもので、魔法を発現させた本人自身には影響はないはずだ……。
「ニュウ…ッ!!」
無言でヴァロールの胸を裂くニュウから目を逸らすことができずにいると、ミュウの短い叫び声が聞こえてきた。
そしてニュウの側へと駆け寄ったミュウはニュウの肩を掴み、ヴァロールへの一方的な蹂躙を無理矢理中断させる。
「目を覚まして、ニュウ……!!」
首が落ちるんじゃないか、と思うくらいにニュウの肩を激しく揺さぶっていたミュウは、一度手を止めると胸元から何かを取り出した。
それは魔石のような何かが着いたペンダントみたいだ。
ミュウはそれを握り、祈るような仕草をした後、ニュウの額へとかざした。
するとミュウとニュウの周りが突如淡く発光し、ニュウはその場で倒れ、ミュウはそれを優しく受け止める。
俺は何が起きたか理解が追いつかず、まるで現実と幻想の境界線がなくなってしまったみたいだなあ、とどこか心ここに在らずで眺めてしまっていた。




