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48泊目 「触手の活け造り……」

 引き続き闇羽虫の羽をむしっていると、エルが両手いっぱいにアイ・デューサの触手を抱えて戻ってきた。

 そして引き攣った笑顔で腕の中でもぞもぞと蠢いている触手を地面に落とさないよう、紙容器の中にそっといれた。


「この子、本体? から離れてもまだ動くんですね……」


「新鮮、ってことで良いんじゃないか……?」


 その気持ち悪い触手たちにかける言葉が見つからなくて、適当なことを言ってしまった。

 食材は新鮮な方が良い、というのは当たり前のことなんだが、魔物に至っても新鮮な方が良いのか、というと微妙なところだな。


「オイゲンさんにこの触手たちを輪切りにしてほしい、と言われたのですが、動いてる触手を切るのってすっごく難しいんですね……」


 エルは右手にナイフを持ちながら、オロオロしている。


「こうなったら……」


 そして淡く発光しているなにかの粉を瓶から出し、触手に向かって振りかける!

 すると、触手たちの動きがパタリと止んだ。

 さっきまで元気いっぱいに動いていたのが嘘のようだ!


「?? エル、今のは何だ? 触手たちが動かなくなったようだが……」


「これは、低級の錬金魔法です。相手の身体の自由を奪う粉塵なのですが、死体? っていいのかな……。死体にも効果があるなんて新発見です! 一か八かで使ってみて大正解でした! あ、もちろん人間が吸い込んでも害がない作りに調合しているので安心してください」


 ふふん、とエルが鼻を鳴らしながら得意気に言う。

 エルはどうやら魔法のことになると饒舌になるらしい。普段のおどおどとした態度も消え、自信に溢れたような口調と喋り方になる。

 エルは更に言葉を続ける。


「そうそう、今試作中の練金魔法があって、それは道具という触媒を経由させずに魔法を発動させる、というものなんです。練金魔法というのはまず道具を触媒としないと魔力を放出できないので、基本的に道具ありきの魔法なんです。けれどマナ自体を身体に纏わせることができたら都度道具を使わなくてもできるかなって……」


「そ、そうか、わかった! 要はこの触手たちはエルの練金魔法のおかげで動きを止めたってことだな!」


 このまま放っておくといつまでも喋り続けていそうだ。早く魔物たちの下処理を終わらせてしまおう。

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