39泊目 いのちだいじに
「よし。みんな、忘れ物はないか? 出発するぞ!」
滝の休憩所を後にし、香炉の探索に向かう。
皆、片手にマンドラゴラの漬物を持っているのがなんかシュールだ。
途中まで進んだ道をさらに進み、三叉路へと辿り着くとミュウが足を止めた。
「待って。香炉の匂い、あっちからしてる気がする」
「え、僕、全然わかりませんわ……。ミュウの嗅覚は獣生ですわね」
「えー! そうかなあ? なんか甘いような燻製のような、不思議な匂いがしてくるんだけどなあ」
ニュウが言う通り、すごい嗅覚だ。
あてがないまま歩いているよりも、ミュウの言うことを信じてみよう。
匂いがしてくる、と言う三叉路の右の道を進むことにした。
「俺も全然匂いとかわからん……ミュウもヴァロールに近づいたんじゃねぇか?」
歩きながらそう言った瞬間、ミュウの鉄拳が俺の脇腹めがけて飛んでくる!!
「ーーーーッ……!!」
あ、あまりの強烈な鈍痛に声が出ねぇ……!!
ミュウもまたレベルが上がってきて十分に強くなったようだ……。
喜ばしいことだが、不意打ちの攻撃は勘弁してくれ! そこら辺の魔物に喰らうよりもデカいダメージを負ってしまった……。
脇腹を撫でつつ道なりに進んでいると、ふと前方で何かが光っている。
何かと思って近づくと、それは光の結晶が入ったランタンだった。
「……あ。コレって……」
立ち止まった俺の後ろをついて歩いてたエルが、俺の肩から顔を出して床に落ちているソレを見る。
ーーーー冒険者の死体だ。
この冒険者も、この広大なダンジョンを踏破しきれず、志半ばで倒れたのだろう。
その身体は半分ほど白骨化が進んでいた。
ここまでの死体になると、教会へ運んで祝福による復活を受けることができず、回復魔法や回復アイテムも効かない。
自分たちも運が悪いとすぐにこうなってしまう、ということは明白だ。
少し緩んでいた気もしまり、俺たちはお互い注意を払いながら、"いのちだいじに"を作戦目標にすることを誓った。




