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38泊目 "お約束"を超えてゆけ

 倒れていたヴァロールが起き上がり、再び俺たちに標的を定めた!!

 ……なんてこともなく、無事に撃退できたのだった。

 体感的に、しっかりレベルも上がっていっていることがわかる。

 今はレベル6。うん、ダンジョン探索もスムーズにいく位には成長しているな。


「そろそろアタシ達も難なくヴァロールを倒せちゃうくらいには戦闘のコツを取り戻した、ってことね」


「ええ。結界陣を破られたことは驚きましたが、結構呆気なく倒すことができましたわね。」


「俺様の最初の一発目が効いたな! ガハハ!」


 仲間たちが勝利を喜び合っている中、エルの腹が大きな音を立てた。


「で、でもやっぱり空白は収まりません〜……。お腹、空きました! 残っているゴブリンとマンドラゴラ、食べて良いですか?」


 赤面しながら恥ずかしそうにエルが訪ねてくる。


「勿論だ、いくらでも食え! エルはゴブリンの煮付け、平気なのか? すごい癖のある香草が入っているんだが……」


「はい、むしろこれ大好きです! ユートさんも美味しそうに食べてましたよね」


「初めて口に入れた時はビビったけど、なんとなくクセになる味なんだよなあ……」


 そう言いながらゴブリンを食べ続ける。

 うん、やっぱり食べれば食べるほどこの味が病みつきになっていく気がするぞ……!

 手の部分もなかなかに美味しい。鳥の手羽先のように骨についた肉をしゃぶるのがまた良い感じだ。


「うええ……。オイゲンには悪いけど、アタシはその香草、ってやつはパス……。ていうかやっぱりゴブリン、ってのに拒否反応出てるのかな〜」


「僕も……。このなんとも言えない香草の香りはなかなかに慣れるのに時間がかかりそうですわ。というか、慣れる日が来るのでしょうか……」


 ミュウニュウ姉妹はやっぱり無理か。

 普段の食卓での好き嫌いで、ある程度仲間の好みは把握している。

 異国風の食べ物が口に合わない二人は、旅に出ている間もよく食に困っていたらしい。

 けれど、マンドラゴラの漬物は気に入ったようでずっとポリポリと食べているようだ。

 オイゲンは倒したヴァロールの舌を切り取り、胡椒をまぶしてガラス瓶の中に入れている。

 ま、まさか食べるのか……? ヴァロールの舌を……?

 いやいや、それを口に入れるのは流石に怖いような……。

 俺はオイゲンの行動を見なかったことにして、香炉探しに出るための準備をはじめることにした。

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