31泊目 「魔物……食べさせてください!」
「と、言うわけなんで、俺様と坊ちゃんは食材を取りにいってくる。嬢ちゃんたちはさっきの滝んところで休んでてくれ」
食糧バッグからいくつかの食糧をミュウ、ニュウ、エルに手渡しながらオイゲンが言う。
「本気……なの? いや、でもこれは食べてないと本当にお腹ぺちゃんこになって死んじゃうし……うーん……」
ミュウが唸る横で、ニュウも地面に目線を落としている。
そんな中、エルは目の前を見据え、振り絞るような声を出した。
「私、食べます……」
その声に全員の目線がエルの方に向く。
すると、今度は力強くエルが言う。
「……私、魔物でもなんでも食べます! 私の分のパンとかはいらないので、魔物を食べさせてください! 皆さんに甘えてばかりで、それじゃダメなんです。アレを手に入れるまでには、なんだってします!!」
それは、揺るぎない決意の言葉だった。
その言葉に呼応するかのように、ミュウとニュウも顔をあげる。
「……ミュウ」
「……うん、そうだよね」
そして二人は顔を見合わせて頷いた。
「もう、そんなかっこいいエルちゃんを見ちゃったらさ、アタシたちだって協力しないわけにはいかないよ! 仕方ない、牛でも豚でも、なんでも食べてやろうじゃない!!」
いや、牛や豚は普通だろ!?
「ええ。僕もかっこいいエルさんを見てしまったらお腹を括ることができましたわ。新しい美食との出会いと思って、受けて立ちますわ」
「わ、私がかっこいい……!?」
かっこいい、と言う言葉に反応して赤くなるエルだったが、決意を込めた表情が緊張を解いたように綻んだ。
「ミュウさん、ニュウさん、ありがとうございます……! こんなことになっちゃって本当にごめんなさい」
頭を下げたエルに対し、ミュウニュウの2人はVサインをしてみせる。
「だけど動いてる魔物を見せられたら、流石に食べられなさそうだからアタシたち女の子グループは休憩させていただくとするわ……」
と、3人の女性陣は滝へと向かっていった。




