21泊目 おばけなんてないさ、おばけなんてうそさ
「あ! 見て見て! ン=ルゴロ、あそこじゃないかな!」
ミュウが指差す先には蔦に覆われていかにもな雰囲気を醸し出している地下洞窟への入り口があった。
「想像していた以上に、何かがでてきそうなダンジョンですわね……。幽霊さんとかに会えるのかしら」
「おいおいおい! やめろニュウ! ユーレーなんてもんは存在するわけないだろ! お、俺様は絶対に信じないぞ……絶対に……」
「オイゲンさん落ち着いて、大丈夫ですよ。私が一度入ったときには幽霊はいませんでした……多分」
「多分って何だよ!! いるかいないかわからん存在ってのが一番わけわからんで怖いんだよ……」
ダンジョンの入り口を前にして騒ぐメンバーたちを制し、ようやくその内部に足を踏み入れる。
「とりあえず魔物を倒しながら、地下13階まで駆け足で進もう。寄り道をせず、階段を見つけたらすぐ降りて目的のものに最短距離で近づく方が良いな」
魔物に警戒しながら恐る恐る進みながら、俺は全体の指揮を執る。
と、その刹那ーーーー
「危ないッ!!」
ミュウの声に振り向くと、そこには俺をめがけて飛びかかってくる中型の獣が居た。
「…………ッ!」
突然の出来事に立ちすくんで衝撃を覚悟した瞬間、
「ギャァァァァァッ!!」
獣の身体が真っ二つになり、双剣を携えたニュウが見えた。
「油断は禁物ですわ。僕の攻撃がもう少し遅かったら、ユート様はあの世行きでしたわね」
そう言うニュウは息が上がり、肩が上下している。
「やっぱり、前みたいに動けるようになるには時間、と改めての経験値が必要ですわね……」
「ニュウ、ありがとう。助かった、少しでも油断してたら大変なことになるな……」
と、会話をしている矢先、前方にまた同種の獣が見えた。
「肩慣らしも兼ねて、魔物を倒しながら進んだ方が良いな」
そう言いながら片手剣を構え、一気に引き抜き、そして獣の横腹に刺すーーーー!
「ギャウ!」
流石に一撃では倒しきれず、相手の攻撃を盾で防ぎながら2発目、3発目、4発目と攻撃を叩き込んだところで、やっと倒すことができた。
「これは相当に弱くなってるな……少し前なら一撃で倒せた相手だぞ……」
やれやれ、と少し空虚な気持ちになりながら周りを見渡すと、ミュウ、ニュウ、オイゲン、エルもそれぞれ小さな獣を狩っていた。
ミュウ、ニュウは元々が怪力……じゃなかった、元々のステータスが高く強いため、苦戦している様子はない。
オイゲンとエルはなんとか一人で獣を狩れるギリギリのライン、という感じだ。もちろん俺も強さでいうと恥ずかしながらミュウニュウ姉妹には敵わない。
これは中々に先が思いやられるなあ……。




