19泊目 ステータス底上げはディナーの後で
「紳士淑女の皆々様! 本日のメニューを発表しよう! 獣肉のスタミナ焼き、薬屋特性薬草入り滋養強壮カレー、スパイス激辛ハンバーグ、たっぷり野菜のミネストローネ、チーズと生ハムのシーザーサラダ、そしてデザートにはマッチョプディング!! おら、たんと食え!!」
食堂の大きなテーブルの上に所狭しと並んだ料理に、全員が感嘆の声をあげる。
これは……スタミナがつきそうなうえに栄養素も抜群だ! 明日からのダンジョン探索にもってこいのメニューだな!
早速全員で手を合わせ、いただきます! を高らかに叫んだ。
「このお肉、何の獣肉なの? すっごい美味しい! ガーリックの香りも最高……!! こういう塊肉は、こんな感じに少し噛みごたえがあるくらいが良いのよね、噛めば噛むほど味が出るっていうか……。甘辛い味付けってとにかくご飯が進むの、なんでだろ?? あぁ〜食べすぎちゃう!」
スタミナ焼きを頬張るのはミュウ。さっきから3度目のご飯のおかわりをしている!
「僕の中のマナに染み渡るようなカレー……! これ、MP回復効果がありますのね。素晴らしいですわ。それにスパイスが効いててとても美味しい! 辛すぎないのにスパイスの旨味で汗が出てくるこの感じ、まさに天才的ですわ……! いくらでも食べれちゃう……!」
カレーを食べていると思ったらすぐにまたおかわりに席を立つニュウ。
「いやぁ〜、これは大人のオネーサンであるウチにぴったりのハンバーグやぁ。ピリッとした刺激と粗挽きのお肉が絶妙やね〜。あ、この味はアレやね、ブルーリーフやねぇ。やっぱりブルーリーフひとつで脂っこくならずにさっぱりと食べられるんやね」
クロエは、マイペースにのんびりと激辛をものともせず、ハンバーグを口に運んでいる。……そんなに一気に食べて大丈夫なのか?
「ミネストローネにサラダ、普通の食材、普通の調理法のはずなのにこんなに美味しいなんて……! スープは野菜の甘みたっぷりで、サラダはくどすぎないチーズが生ハムの塩味に、すごく合う……! 練金魔法でも使ったかのような調和っぷりです!」
エルの目の前にあるサラダとスープがみるみるうちに減っていく!
俺は先にデザートの味見をしてみよう。
マッチョプディングとかいうデザートは初めて口にする。さて、どんなものかな。
期待を胸にプリンを一匙すくってみると、普段食べているプリンよりも弾力がある。
そのまま口に運ぶと、衝撃が体を駆け抜けた!
「す、すげぇ……!」
思わず口にすると、オイゲンが得意げにこっちを見る。
「オイゲン、これ、何入れたんだ? すっげぇ美味い、その上、HPが増えたような気がする……」
プリンの甘味の中にさっぱりとしたほろ苦さがあり、それが絶妙なアクセントとなっている!
一口食べた瞬間に体力がみなぎった気がして、全てにおいて感動しかないプリンだ……!
「おっ! すぐに気づいてくれたか、さすがはユート坊ちゃんだ。このプリンには花中晴草を練り込んだバターを使ってみたんだ。だから、HPが増えた気がするってのも大正解。花中晴草は高価だがHPを底上げする効能があるからな。ダンジョン探索にはもってこいだろう」
「花中晴草……! ここら辺の露店では売ってなかったはずだが……」
「ユート坊ちゃん、俺様を誰だと思ってんだ? その花中晴草は、少し前に平野の方まで狩りに行った時に見つけたんだ。自分で全部食っちまおうかとも思ったけど、取っといてよかったぜ」
ーーーーオイゲンの粋な計らいに心から感謝しつつ、俺たちは用意された晩御飯を一つ残さず平らげた。
いや、これは文句のつけようがない最高の晩飯だった!!
ダンジョン探索もいよいよ明日に迫ったが、これで頑張れそうな気がするぞ……!!
今日は全員に早めの就寝を勧めて、ゆっくりと明日に備えて体を休めるとしよう。




