17泊目 「なんだか久しぶりだね、こういうの」
薬屋を出てほんの80メートルほどの広場の一角に、次の目的地はある。
次の買い出しはダンジョン探索に欠かせない、食料品だ。
腹が減っては戦ができぬ、とは昔からよく言ったもの。丸一日、時には数日をかけて踏破するダンジョンでは、食料の確保は絶対だ。
ダンジョン内で調理できそうな日持ちする食材、調理用の焔の結晶もいくつか買わないと。
調味料や調理器具はあるものを持っていけば良いとして、水の確保も必要だな。
うーん……ここでも結構な出費になりそうだ……。
木製の軽い扉を開けて食品屋に入ると、さまざまな食品が目に飛び込んでくる。
市場で売っているような生鮮食品とは異なり、冒険者用の保存食や缶詰、携帯食などが所狭しと並ぶ。
その中からいくつかの食料と携帯用の水、焔の結晶を見繕い、カゴに放り込んでいく。
「これくらいで良いかな、結構買ったなあ……」
と、会計を済ませて肩を落としてると、ミュウの明るい声が響いた。
「いやぁ、今回の冒険で使わなくてもさ、次の冒険にも使い回せるから大丈夫でしょー!」
両手に大量の荷物を抱えながらブンブン振り回し、少しも重たい素振りを見せないミュウ、やはり物凄い力だ……!
って、使い回し?
「待て待て、ミュウ、まさか今回の冒険が落ち着いてもまた新しくダンジョンに潜るつもりか?」
「だってさ、正直いうと、やっぱりこれだ! って気持ちに……ならない? 困っている人がいたらその人のために武器を振るって直接助けてあげて、そして見たこともないような魔物とも対峙して、魂の震えを感じるっていうか……俺より強いやつに会いにいく! っていうか……」
「最後の言葉はよくわからないけど、言おうとしてることは、俺も理解できる。エルのあんな姿みたら、放っておけないもんなあ……。あ。今後は自警団兼ゲストハウス、でもやるか?」
「なにそれなにそれ! 最高じゃん! さんせーっ!!」
「ま、俺たち今はレベル1、なんだけどな……」
「うう……それはこれからどうにかするもん……」
あらかたの買い出しも終了し、騒がしい夕暮れ時の広場を横目に、俺たちは帰路についた。




