100泊目 明かされる真実
「おーい!こっちはもうみんなの手当も終わったで〜!ユート、ミュウはどないな感じ〜?バタバタしちゃったけど、ゆっくりとまた眠れるようにオイゲンがハーブティーの準備してくれてるで〜。みんなで一緒におやすみ前のティータイムといこうや〜」
クロエが全員の手当てをしてくれたようで、俺はさらに安堵をした。これでゲストハウスの仲間たちもケガひとつない健康体に戻ることができたはずだ。
ミュウの方を見ると、またいつもみたいに太陽のような笑顔でクロエと談笑している。
気持ちよく寝ていたところにまさかの邪魔が入ってしまったが、ようやく落ち着くことができそうだ。
ダンジョン探索にサキュバスの襲来、ここ最近は刺激が強い日々を送っているなぁ……。
疲れが落ちきっていない身体を壁に寄り掛からせていた俺は、わずかに残っている気力を込めて立ち上がった。
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ミュウ、クロエと共に仲間たちが待つ談話室へと向かうと、そこには既に新鮮なハーブの香りが漂っていた。
「おっ、来たか。今回のハーブは最高だぞ。稀少なムーンリーフだ。ここぞというときに淹れようと思っていたんだが、災難続きの今こそリフレッシュが必要だと思ってな。おろしたての高級品だ。よーく味わって、そして身体を温めてみな。ぐっすりと夢の中だぜ!」
そう言いながらオイゲンに差し出されたカップからは、甘く蕩けるような芳醇な香りが漂っている。花の蜜を濃縮させたような、それでいて爽やかな甘い香りが鼻腔をくすぐると、それだけで心が強制的にリラックスモードに入ってしまった。
椅子に腰をかけて一口飲むと、身体の芯までじーんとした甘さと温かさが沁み渡る。あまりの美味しさとその味の優しさに、なんだか目頭が熱くなってくるようだった。
ダンジョン探索の苦労やつい先程まで行われていた戦い、魔物料理の新レシピなど、途切れることのない会話を楽しんでいると、今までハーブティーを飲みながらも黙り込んでいたエルが、何かを決心したかのように口を開いた。
「あの、ニュウさん。私、ニュウさんに何度も助けられ、何度も救われました。それは命や身体だけでなく、心そのもの……私の中の感情まで全てです。それで私、思ったんです。今度は私がニュウさんを救いたい。だから、やっぱり早く強くなりたい。そして、元に戻らなければいけない。本当の私……いや、僕を見て欲しい。好きです、ニュウさん……!」
その突然の告白を聞いて、ニュウはもちろん、周りの全員が意をつかれた表情でエルを見ていた。
そして、最初にはっとしてその告白に答えたのはニュウだった。
「え、ええ。突然の告白をいただきびっくりしましたけど、僕もエルさんのことは大好きですし、もう大事なかけがえのない仲間のひとりですわ。それに、放っておかない妹が出来たみたいで嬉しいですもの。ほら、僕には乱暴な姉しかいないでしょう?ずっと可憐な妹が欲しいと思っていたところにエルさんが来てくれたから、毎日幸せですのよ」
「ちょっとニュウ!乱暴って失礼しちゃうわねぇ!ニュウだって昔はすぐに暴れ回ってたじゃないのー!」
頬を膨らませなが抗議をしているミュウを、ニュウは顔色ひとつ変えずに無視をする。
「あの……違うんです」
蚊の鳴くような声で何かを呟いたエルに、全員の視線がまた集中する。
「違うんです……。わた……ボク、男なんです!!!!」
…………???????
その場にいた全員がエルの発する言葉に脳味噌の処理が追いついていないようで、フリーズをしている。もちろん、俺自身もエルの言葉の意味がわからない。脳味噌が理解することを拒否しているようだ。
「あはは、何言ってんねん〜。熱い告白の後のそのギャグ、ちょっと微妙ちゃう〜?ギャグセンもちょっと磨こな、30点!」
クロエが顔の横で手をひらひらさせながらダメ出しをする。
それを見ていたみんなもクスクスと笑い出し、テーブルはアットホームな笑顔に包まれていた。
しかし、エルだけはずっと真剣な表情のままだ。
「冗談……だったら良かったんですけど、本当のことなんです。ボク、皆さんに何故ダンジョンにあるアイテムが必要なのか、って話していませんでしたよね。今が良いタイミングだと思ったので、改めてお話しさせていただきます」
そうしてコホン、と小さく咳払いをしたエルは、自分のことについて訥々と話し始めた。




