コンビニ前で後輩を助けたら恩返しされるどころか、「あなたのことが嫌い」とまで言われて絶望なんだがどうしようこれ
ピロリロピロリロ
「ありがとうございしタァ」
夜勤なのか早番なのかわからない大学生の気怠げな挨拶。
この声にも聞き慣れたもので、俺にとっては一種のモーニングコールのようなものだ
「さて、今日も学業に専ね、、、、、っと」
俺がどうしようもない独り言を言おうとしている時、目の前の騒ぎが目につく。
「おらぁ、これどうしてくれんのぉ、えぇ?」
「すみません、弁償ならしますから。」
「お前のせいで朝からマジで最悪の気分だわ」
「わかりました、いくら出せば良いんですか、はぁ。」
制服から察するに、揉めているのはうちの生徒と地元の荒くれ者のようだ。
ここで、
『待った?じゃあ行こっか』
的なノリで彼女を救うことがラブコメでは王道のパターンだ。
が、俺にはそんな陽キャみたいなコミュ力や、実は喧嘩が強い、
みたいなステータスはあいにく持ち合わせていない。
「は?何ため息とかついてんの?」
「いや、たかがコーヒーがシャツについたくらいでって思っただけですけど。」
「それと生憎今お金持ってないので、後日にしていただけますか。」
「てめ、女だからって手をださないと思うなよ」
お、何やら俺がひとり耽っている間に事は重大になりつつあるようだ。
しかし、ここで助けに入ったところで俺に何ができるわけでもないしな。
無干渉が一番一番。
学校に早く行って昨日買った新刊でも読みますか。
そう思って集団の横を通り過ぎる時だった。
「おいお前」
いきなり荒くれAが俺の方を見て声を放った。
それに合わせて俺も自身の後方を振り返る。
しかしそこには眠そうな猫しかいなかったニャーン。
「いや、どう見てもお前しかいないだろ、そこの地味メガネお前だよ」
「おーよしよし、朝からお前は可愛いでちゅねー」
猫ってほんとに可愛いよな、ほんとに世界は猫に寄ってしか救われないぜ、うん。
何やら俺の容姿を蔑むような言葉が聞こえたのは気のせいだろう。
「聞こえてんのか、陰キャ!」
いけないいけない、こんなことをしていたら朝の貴重なエンペラータイムが終わってしまう。
明日も会えたら会おうニャーン。
そうして別れを惜しみつつも歩みを進め始めるおれ、本当にタフな子、、、。
ボゴッ
そんな感傷に浸っているのも束の間、側頭部に重い衝撃とともにペットボトルを思い切り踏みつぶしたような音が脳内に響く。
視界に映る青いアスファルト。
あれ?俺って岩合○昭先生みたいに猫と同じ目線で猫と戯れてたっけ?
「逃・・・ろ、・・・バイぞ」
「だ・・・救きゅ・・・・・・・ます。」
視界の端に残された亜麻色の情景を最後に、俺の意識は闇の中へ沈んでいった。
1.
「で、新学期そうそうに遅刻っわけか、まあ湊人らしいけどな」
「圭は俺のことをなんだと思ってるんだよ」
「でも、怪我は大したことなくてよかったじゃんか、どこかの誰かさんがいち早く救急車を呼んでくれたことに感謝することだな」
「それもあるけど、そこは俺の受け身が上手かったと褒めるところだろ」
「あー確かにな、じゃそゆことにしといてやるわ」
「はいはい」
一年の時からクラスメイトで、ひょんなことから友になった成田圭と軽口を交わすことも俺の日常となっている。
こいつ無駄にイケメンで女子人気高いけど、なぜか嫌いになれないんだよなぁ、
やだこれが噂に聴く恋ってやつ?ドキドキ。
こうして俺はいつものように変わらない学校生活に勤しm、、、って何か納得いかーん。
そういえばあの女子生徒は無事だったのだろうか。
流石に、アラクレイモン達は通りすがりのモブキャラを気絶させて現場に留まれるほど神経は図太くないと信じたいところだが。
もしかして、助けた(八つ当たりの標的になった)ことがきっかけで新しい恋とか始まっちゃうやつですか、湊人くんこの展開ラノベで読んだことあります、ラノベで。
そうしたことに心踊らせながら時は過ぎていくのであった(倍速)
3日後
「いやいや」
「どうした湊人さんや」
「いやいやいやいや」
「気味が悪いぞ、言いたいことがあるならさっさと言え」
「あの女子生徒なんでお礼言いに来ないんだよーーーーーーーーーー」
「・・・・湊人・・・・生きろ。」
そう言って肩に手を置いて来る悪友に少し苛立ちを感じながら、ことの経緯を遡ってみる。
「確かにあの女子生徒は俺が助けた、そうだよな?」
「まあ助けたといえば、助けた?のかもな」
「少女に詰め寄る悪党、そこに颯爽と現れるヒーロー、そして自らを犠牲にしてまで戦い最後には少女を守り抜く、このシナリオでどうして惚れないのか?んん?」
「湊人、そういえば頭を強く打ったそうじゃないか、
俺の知り合いに有名な医しゃ「圭なんかもう知らないっっ」
この件に関しては圭とは分かり合えそうにないので、次の授業の復習でもして時間でも潰そうかと思っていると、教室の前方の扉が開く。
ガララ
「尾野湊人さんがこのクラスって聞いて来たのですが、いますか。」
シーン。
「おい湊人、まさかあれが言ってた」
その言葉で前を向いた俺は亜麻色の髪の凛とした佇まいをした美少女が俺を呼んでいることに気づいた。
え!?!?来ちゃったよ。
どうしよう心の準備とかできてないし髪型もセットしてないし(デフォルト)
助けてあの時の猫ちゃーんニャン。
「で、君は俺に何の用事で?」
俺は平静を装いながら俺が助けた美少女に話かける。
(この子よく見たら制服のリボンの赤だし一年生だったのか)
心の中でそんなことを思いつつ、相手の返答を待つ。
「先日は私のせいで怪我をされたみたいなので安否を確認しに来ました。」
「大丈夫そうでよかったです、では。」
え?それだってわけじゃないよね。
だってまだ名前教えてもらったりとか、連絡先交換したりとかetc….。
そんな俺の心中に関係なく彼女は歩みを進めていく。
「待って」
俺は勇気を出してその言葉を彼女に投げかけた。
「なんですか。」
彼女の無機質な声が俺の心に突き刺さる、もう僕立てません。
「いや、そういえば名前聞いてなかったなと思って」
「あぁ、一年の都張朝菜です。」
俺の質問に対して、早くこの場から立ち去りたい意志がひしひしと感じられる返答が返って来る。
しかし俺は諦めない、そう連絡先を聞くまではと自らを鼓舞し次の言葉を用意するが、
「あのさ、れんらk「あのひとついいですか。尾野さんは私のみがわりになってくれました。確かにその件は大変ありがとうございます。」
「ですが、私はあなたの事に興味はありませんし、今後関わるつもりも一切ありません。」
「私はあなたのことが嫌いです。言いたいことは以上です。では。」
春の暖かい日差しが差し込む廊下には、呆然と立ち尽くす俺の背中が今起こった事を受け入れられないことを顕著に表していた。
拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございます。
続きは一週間ペースで更新していきたいと思ってます。