レッツゴーライブ!
『次は特別ゲストの登場てす!』
アナウンスと共に舞台袖からステージへと出ていく。
「はーい! みんな来たよー!」
「いえーっ!」
「盛り上がってるー?」
私達の登場に合わせて、会場から歓声が聞こえる。
しかし、私を見て、「え?」とか「ミカちゃんはー?」疑問の声を上げた。
「ここで大事なお知らせが一つあります」
そこで恋羽がマイクに口を近づけて、神妙な面持ちで話し始めた。
「ミカは事情により今日のライブには出ることが出来なくなってしまいました」
「えぇー!」
「嘘ー!」
会場からはメンバーが一人欠けている事を嘆く声が上がる。
「その代わり、新メンバーがいます!」
ん? その紹介の仕方は何かおかしいような……?
「ほら、挨拶」
「は、はい」
メンバーの一人に背中を押されたので、慌てて私は前に出る。
「えっと、今日は精一杯頑張るので応援してください!」
「「いいよー!」」
生徒の中から声が上がる。
声の方向を見ると、風間と古木がこっちに手を振っていた。
あいつら、もしかして気づいてる……?
風間と古木の声を受けて、一気に会場は私を受け入れる雰囲気へと変わっていく。
「がんばれー!」
「応援してるー!」
応援の声が会場いっぱいまで広がったころ、恋羽が満を持して次の曲へと行くことを告げる。
「それじゃあ最初の曲行きます!」
曲が流れ出す。
それに合わせて私達は踊りだした。
よし、歌いだしは上々。
皆にしっかりとついて行けている。
曲が進むにつれ、どんどんと会場のボルテージは上がっていく。
ちらほらと自分の推しのメンバーの名前を呼ぶ人も現れた始めた。
その中で一際大きな声で私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「うわぁぁぁぁっ‼ はるこちゃぁぁぁんっ‼」
日下部先輩が喉がはち切れんばかりに叫び声を上げてサイリウムを振っていた。
笑顔でそちらを見ると、日下部先輩は「ぐわぁぁぁっ‼」と言ってその場に倒れた。
またもう一方から大きな声が聞こえる。
「はるこぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼」
津瀬は運動部で鍛えた大声を使って、日下部先輩よりも大きな声でコールをしている。
こちらはハチマキまで巻いて、コールどころかヲタ芸までも完璧にこなしている。
ライブに対しての振る舞いがやけに堂に入っているのが印象的だった。
ぱちん! とウインクを送ると津瀬は「ぎゃぁぁぁぁぁっ‼」と悲鳴を上げて沈んでいく。
その姿はゲームのモンスターに酷似していた。
横で踊る恋羽を見る。
恋羽はいつも私に見せている笑顔とはまた違った笑顔で会場の皆に笑顔を送っている。
(これが、恋羽の見ていた世界……)
ステージの上から見た景色はきらきらしていて、私は何か夢を見ているような気持ちに包まれた。
ライブはあっと言う間で、最後の曲が終わる。
「ありがとー!」
「またねー!」
会場のみんなに手を振りながら舞台からはけと、プロデューサーが待っていて私達を迎えてくれた。
プロデューサーはじっと私を見ていたが、すぐにふっと笑うと、
「いいライブだった」
と言って頷く。
「……っ! はい!」
何か怒られるのではないかと思っていた私は、褒められたことで嬉しくなってつい勢い良く返事してしまった。
「ああ、これからもよろしく頼むぞ」
プロデューサーが笑顔で眼鏡を持ち上げる。
「──新メンバーとして」
「……はぁ!?」