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再開と嘘。

ジャンル別ランキング12位ありがとうございます!

 翌朝。

 僕は登校すると、いつもの通り席に座って勉強していた。

「奏雨ー、呼ばれてるぞ」


 教室の扉の前にいた古木が僕を呼ぶ。

 僕に用事? 誰だろうか。


 呼ばれて行ってみて、僕を呼び出した人物を見て僕は硬直した。

 そこにいたのは昨日ナンパから助けた魚形だったからだ。

 向こうも僕が出てきた事に不思議そうに首を傾げた。


「あれ……?」

「あー、えっと……」


 奏雨遥子を呼んだ筈なのに、出てきたのは地味な男。

 魚形は首を捻っている。


「えと、先輩お名前は……」

「……奏雨遥真だ」

 僕が名前を名乗ると魚形は「奏雨……」と呟いた。


「奏雨先輩は女の子だったような……?」


 まずい。非常にまずい。

 昨日は声を一切変えてなかったし、顔も化粧していたが、流石にバレるか……っ!


「でも声も似てるし、何だか面影似てる……?」

 まずい……っ!

 これはバレ──


「なるほど! 妹さんですね!」

 魚形がパッチーン! と指を鳴らしてそう言った。


 た、助かった……。

 こう言っちゃなんだけど、魚形がバカで良かった……。


「ああ、そう妹がいるんだ」

「そうなんですね。遥子先輩は何組なんですか?」

「ああー、えっと、そう、あいつは不登校だから滅多に学校に来ないんだ」


 そう言うと魚形はしゅん、と落ち込んだ。

「そうですか。お礼を言いたかったのに残念です……」


 ざ、罪悪感が……!

 ごめん魚形、でも僕が女装してるってバレたくない……!


「じゃ、そういう事だから……」

「あ、待ってください!」

 魚形が僕の制服の裾を掴む。


「あの、遥子先輩はいつ学校に来るでしょうか……」

「……また当分来ないんじゃないかな」

「そうですか……」

 魚形が肩を落として落ち込む。


 その時予鈴が鳴った。

「じゃあ、戻るから」

「はい、ありがとございました」

(ごめん、魚形さん……!)

 心の中でもう一度謝って、自分の席へと戻った。


 僕が席に着くとすぐに担任が入ってくる。

「はーい、席に着けー」

 出欠を確認してから、教卓に名簿を置いて連絡事項を告げる。

「分かってると思うが、明日からテスト二週間前だ。しっかり準備しとけよ」

 周囲から「ええーっ!」と声があがる。


 ふ、毎日の積み重ねがないからそうなるのだ。

 僕は毎日予習復習をみっちりとやり込んでいるからな。その点は完璧だ。


 今回の定期テスト、一位は容易いな。

 眼鏡を持ち上げて、一人くくっと笑った。






★★★




「……」

 放課後、図書室へ行くと魚形が机に突っ伏していた。


「えっと、魚形さん何やってるの?」

「あ、奏雨先輩……」

 魚形は顔を上げて僕を見るとまた顔を下に向ける。


「私、実は成績が悪くて……」

「ああ、そうなんだ……」

 イメージ通りだな。


 僕も席に着いて勉強道具を取り出す。ノートと参考書を広げると問題に取り組み始めた。


 突っ伏したまま顔だけこちらに向けて見ていた魚形は、そんな僕を見て質問してきた。

「……もしかして、先輩って勉強得意なんですか?」

「まあ、少しくらいは」


 それを聞いた瞬間、魚形が跳ね起きて僕の手を掴んだ。

 

「せ、先輩! 勉強教えてください!」

「は!?」

「私、このままだと留年しそうなんです!」


「り、留年!?」

「今日先生に呼び出されて、このままだと留年する、って」

 勉強は苦手そうだと思っていたが、まさかそこまでだったとは……。


 魚形がうるうると瞳を潤ませて、頼んでくる。

 まあ、勉強を教えるぐらいいいか。


 罪滅ぼしもしなきゃいけないし。


「いいよ、どこが分かんないの?」

「ありがとうございます!」


 魚形が鞄を持って来て僕の隣に座った。

 勉強会が始まった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ランキングで見かけたので読みましたが、面白いです。 遥子ちゃん……女の子を堕としちゃうなんて、罪な女性(?)ですね。 あんな危機的状況で助けてくれたら、惚れちゃうのも無理はありませんけれど…
[良い点] 全体的に読みやすかったので一気に読んじゃいました、これから先も楽しみにしています [一言] ブックマークしました! 僕は名古屋在住なのでそちら側に足向けて寝れなくなりましたね(笑)
[気になる点] 女性恐怖症の症状が出ていませんが、この後の伏線なのでしょうか?
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