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少女は言葉を飲み込む。  作者: 櫓丸
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7

私は戦争屋と街を歩く、大きな木を中心に街が展開されていて必ず木が見える様になっていた。

道は赤い砂岩、その他道でないところは普通の石レンガだった。靴がコツコツと音を鳴らす。

大通りには色々な家が立ち並んでいた。屋台の様に道側に窓がある家(こちらは何か売っていた)、どんな構造なのか一本の梯子だけで立っている家、それどころか宙に浮いている家もあった。ここに住むのは度胸がいると思った。


戦争屋は私の歩幅に合わせて歩いてくれているので特に苦ではなかった。というか、何故こんなに楽しそうなんだろう?ルンルンなんて効果音が付きそうなくらい足取りは軽かった。


街をあらかた案内されて、何か食べるものでも探そうということになり歩いていると声が聞こえた。前から大きめのワゴンを押してくる小さな女の子が走ってきた。

「やぁやぁ戦争屋!街の人が君のことを話していたから見にきたんだ!何でも、随分穏やかな顔をしているとか?」


その子は戦争屋の顔を覗き込むと吹き出して笑い出した。

「あっはははは!戦争屋が穏やかな顔してる!笑えるな、滅茶苦茶面白いじゃないか!」


ワゴンを掴んでケラケラ笑う子に首を傾げて戦争屋を見る、戦争屋はげんなりとした様な顔をしていた。苦手なんだな、この子のこと。

見ているのに気付いたのか、戦争屋は此方を見て笑った。困った様な笑顔だったけど。


「こいつは飴屋、分かるだろうがうるさい子供でな。噂話なんかを聞くとすぐに調べるんだ。秘密があったら話さない方がいい、次の日には広まってる。」


まだ笑っている子を指差して戦争屋は私に説明した。どうやら飴屋と言うらしい。口は硬くはないんだろう。


「ん?わぁ!人間じゃないか!すごい、小さい、可愛い!君何歳?どこから来たの?僕は飴屋!年齢はもうすぐ2000になるよ!近くの家を拠点に飴を売ってるんだよ、飴いる?いるかい?」

「え、えぇと…。」


あまりに言葉を挟む隙がなく、困惑してしまう。2000歳近いと言う発言にも言及したいけど、これじゃ無理そうだなぁ。


「飴屋、二つ寄越せ。あと初対面の奴にそのトークはやめろ阿呆。」

戦争屋が飴屋さんの頭を殴りつけた。私より小さい子によく出来るなと思ったが、よく考えると飴屋さんは2000歳近くだった。


「いてて、チェー。お前に聞いたんじゃないのにさー、僕は人間さん…人間さん性別どっち?ちなみに僕は女だよ!」

「え、と女です…。」

「ならお嬢さんだね!君のために飴作るから見ててねー!」


そう言った飴屋さんはワゴンから材料だろう白い粉と白い炎を出した。ワゴンから炎が出たことに驚いたが、ここはそんな所と思えば何故だか納得してしまった。

飴屋さんは粉と炎を掌でくっつけた。しばらくすると飴屋さんが手を離す。そこには炎と粉はなく、ドロリとした液体の様なスライムの様なものがあった。


「ここからが飴屋の真骨頂だ、見ておくといい。」

戦争屋は飴屋から目を離さず伝える。


目を離さないでいると、飴屋さんはそのドロドロの液体を宙に浮かせて何かブツブツと呟く。

「赤薔薇、向日葵、アンスリウム、ポピー、想い、苺…。」


ドロドロの液体に光が集って、すぐに消える。

液体は真っ赤ないい匂いのものになって、飴屋さんが棒を出すとその液体は棒の先端にくっついてハート形になって固まった。

感嘆の声を漏らす私と違って、飴屋さんと戦争屋は微妙な表情だった。


「戦争屋…、おま、これはダメだろ。」

「言うな、それが俺のとは限らないだろう。」

「いや、これお前の。」

「…。」

「うん、いや、頑張れ…。」


飴を渡して戦争屋の肩を撫でる飴屋さん。私のはまだかな、私のはどうなるんだろ気になる。


「お嬢さんのも作ってやるからな、待っててね。」

苦笑した飴屋さんが宙に浮いているドロドロの液体に手を伸ばす。

光がゆるりと集まってきた。


「レンゲソウ、ミヤコワスレ、記憶、悲しみ、月桂樹、涙、ゴボウ…。」


光が散ると私のは透明で向こう側が見えるほどのものだった、いい匂いはしない。棒の先端に集まって雫の様な形になった。

綺麗な飴に目を輝かせて、ペロリと舐めてみる。

辛い、しかも苦い。でも後味は甘い…?不思議な味だった。


「戦争屋のは心の混乱、お嬢さんのは辛い過去と今が題名さ!美味しく食べてくれよ?」

「ありがとう、飴屋さん。」


お礼を言うと飴屋さんは元々大きい目をさらに大きく開いてこちらを見つめてきた。

淡いピンクの目が飛び出そう。


「こりゃ驚いた、お礼を言うなんていい子だな。戦争屋の坊主とはまるで大違いだ、おまけで飴玉を一つやろう。味は何が好き?」

「えっと、りんご…。」

「おい、大違いとはなんだ。」

「林檎か、美味しいよねぇ。待ってて、すぐに出す!」


飴屋さんはごそごそと自分の服の懐を漁る。今見ると飴屋さんは中々奇抜な外見だった。

ピンクの髪に、ピンクの目。私より長い髪をポニーテールにして、とっても豪快に笑う。

服は原色が多くて、少し目が痛い。特に緑色の手袋。

飴屋さんは額から花が咲いていた、頬には這う様に蔦が絡んでいた。衝撃的だが、綺麗だと同時に思った。飴屋さんの可愛さかとも思うが。


新キャラです。

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