5
腕からダバダバと真っ赤な血液が溢れる。痛みは感じなかったが、流れる血液にパニック状態だった。
それは戦争屋さんも同じようで、溢れる血を見て目をグルグルとさせていた。
「深く切り過ぎたなエヴァ本当に済まない、謝ってる場合じゃないなこれ。薬学者早く傷薬寄越せ早く!」
私よりパニックになっている戦争屋さんを薬学者さんが宥め、医学者さんが血液を瓶に詰めた。
「その五月蝿い奴をどうにかしろ薬学者、道の端に寄っているとは言えこれじゃ注目される。」
「ならもう傷薬渡して良い?」
「もう良い、血液は採取したしさっさと渡してやれ。」
薬学者さんから傷薬を受け取った戦争屋さんはそれはもうダイナミックに私の腕にぶっかけた。いやいや、掛けすぎじゃないかな。傷薬入ってた入れ物逆さまにしたよこの人。もう私の腕粉まみれなんですけど。
「治ったか?本当か?痛みは?」
「もう大丈夫なんで、あの、落ち着いてください。」
「じゃあ、私は医学者と一緒に行くよ。戦争屋に案内してもらってよ、拒否しないだろうから。」
「分かったら呼ぶから、暫く観光しておけ。金は戦争屋が払うから好きにしろ。」
そう言って薄情なことに本当に薬学者さんと医学者さんは去っていった。
なんで宥めるの手伝ってくれないかな、大変だよこれ。
「本当にすまない…軽く浅く切るつもりだったのについうっかり癖で深めに切ってしまった。痛くなかったか?大丈夫か?」
「戦争屋さん切るの上手だったから痛くなかったよ。もう塞がってるし、大丈夫です。」
戦争屋さんは私の腕をまじまじと見て、安心したように息を吐いた。
どんだけ心配してたんだ、この人は。
「なら良かった、お詫びに俺が欲しい物はなんでも買ってやろう。」
「え、そんな悪いです。」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。」
そんなこと?お金が絡んでるのにそんなことなのか?
「俺のことは戦争屋でいい、敬語も取れ。」
「え……、いや戦争屋さん年上なので。」
「構わん、取れ。俺は気にしない。」
暫く2人で道の端で押し問答をしていた、が私が折れることになった。
…渋々私は戦争屋に関しては敬語を取ることにした。
そして手を引かれて街を観光することになったのだ、楽しそうな戦争屋と手を繋いで。
大分奇妙な出会いをしたものだと思う、まさしく現実は小説よりも奇なりだった。
今回は短め。