ながめがよいこのごろ9
人が人でいられる………
僕には分からなかった。別に僕らが何かしなくても、僕は僕で、彼らは彼らで、彼女は彼女であることは変わらないのだ。彼女のその言葉はまるで今の僕らが人ではないかのような言い方じゃないか。
そんなことを考えていると、ロウは何か勘違いをしたようで、僕に優しく微笑みこう言った。
「大丈夫よ。怖がることない。だから、私を助けてよ」
助けてよ──その言葉に少しの違和感を感じながら、僕は上目使いにロウに聞いた。
「………僕はどうすればいい?」
「簡単よ。いつも通りでいい。いつも通り、あなたの見ている世界を創ればいいの。そこに私もついていくわ」
いつも通り、と言われると困ってしまうが、取り敢えず僕はパッと浮かんだ草原に行くことにした。
広い、広い大草原。爽やかな風が萌木色の草を撫でていく。遠くには山が見える。遠く、巨大だから霞がかって淡い青に色づいている。
ロウは大きく伸びをして、たんまりと空気を味わったようだ。僕も真似してみたけれど、少し冷えた空気が肺に刺さって痛かった。
そのままロウはクルクルと舞うように回り、ある程度するとその場にパサッと自ら倒れた。覗いてみると、フフフと笑って勢い良く体を起こした。
「最高!最高よ、ロゼッタ!私、こんな素晴らしい場所初めて!ああ、なんて満ち足りた気持ちなのかしら!」
そしてロウは再び立ち上がると「今度はあっちを見に行きましょう」と僕の腕を引っ張った。