ながめがよいこのごろ6
僕と彼女が出会ったのは今年になって最初の『創造』の授業が終わった後だった。
うんざりした顔で、いつものようにいろんな人に干渉するなか、彼女は初めて僕に声をかけたのだ。
「ええと………ルナ。あなたはルナね。初めまして、私はエルナ。明日は違う名前だから覚えなくていいわ。本当に、酷い授業だったわね」
こんな風に誰かに話し掛けられたのは初めてだったから、僕はたぶん戸惑いを隠せていなかったのだろう。
エルナは「あれ?」と言って僕をしげしげと見つめた。
だから僕は取り敢えず、素直に聞くことにした。「どうして、ルナ、なの?」
「!」
彼女は大変驚いたようだ。同時に少し嬉しそうでもあった。
「あ、あなた、今質問したわよね?」
よく分からないが取り敢えずコクンと頷いた。
すると今度は驚きよりも喜びの方が彼女の中で大きくなったようで、大きな声で「見つけた、見つけたわ!」と叫んだのだ。
そこから僕らの関係は始まった。
あまり派手に感情を出すと変に思われるのではないかと彼女に注意をしたことがあったが、平気な顔でこう返された。
「大丈夫大丈夫。最早この世界に人間なんて誰もいない。みんなみんなロボットよ。私のことはおろか、あなたのことなんて絶対に気づかないわ」