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ながめがよいこのごろ5
4限目。『創造』。
約100年前から導入されたこの授業は、今のこの国を作る基礎となった、と言っても過言ではない。
生徒たちは一人ずつヘルメットのような特別な装置をつけ、意識を仮想空間へと移動させる。そこでは生徒の意識が世界の形を形成する要素となり全てである。例えば僕がそこで海の中を想像したとすると、実際に僕の周りの世界は海と等しいものになる。
この授業で行われるのは『教育』ではない。『洗脳』──彼女はそう呼んでいる。
仮想空間についた生徒たちはまず教師たちの言われた通りのことを想像する。そして指示通りのものを見て、指示通りのことをする。
具体的にどんなことをするのかは僕には分からない。なぜか僕には仮想空間内で教師たちの声が聞こえないんだ。
ロウは言う。
『あれは人から個性を奪う、洗脳だ。名前も、意思も、未来も奪う。』
そしてこんなことも言っていた。
『君の力が必要なの。この世界なんてもうどうでもいい、新しい、人が人でいれる、そんな世界を作りましょう?』