ながめがよいこのごろ2
12月初め。まだ冬は始まったばかりだというのに、今朝は一段と寒かった。
白い息をもったいぶるように吐きながら、僕はいつもの待ち合わせ場所に向かう。
既に彼女が到着していた。
「おはよう、ルナ。昨日はよく眠れた?」
ルナ、僕のことだ。
「おはよう。ええと、ベリーだったけ?」
すると彼女はブンブンと首を横に振った。NO。しかも、割りと激しめの。
「それはもう飽きたから無し。──うーん、そうね………フクロウ!今日はフクロウがいいな!」
今日一日は私のことをフクロウと呼べ、という意味である。
「ええ………言いにくいから却下」
「なら、ロウね。決定」
そういうと、彼女、ロウは学校鞄を大きく振りながら大股で進んで行く。
僕は寒さで縮みかけている身を何とか動かして後ろに続いた。
学校につくまでの10分間。たいていいつもロウはご機嫌だ。フンフンと鼻唄を歌い、物珍しいものを見つけると必ず止まって僕に知らせる。
「見て、ルナ!タンポポだ!」
当然それは花咲くタンポポのことではない。花もなければ綿もない、ほとんど葉っぱの冬タンポポだ。
「どこがお気に召したの?」
「知ってる?タンポポはね、ロゼッタ植物というのに分類されるの。こうやって冬は葉を広げて、春をぐっと待つ。かっこいいでしょ?」
そう言い残して、またすぐに前へと進みだした。ロウは花を選ぶ蝶よりも気まぐれだ。
おまけにほら、
「そうだ!ルナ、一時間目が終わったらあなたの名前はロゼッタね。かっこいいあなたにぴったりよ」
なんて急に振り替えって笑顔で言うもんだから、少し嬉しくて顔が赤くなってしまう。