ながめがよいこのごろ13
萌えた草原の先の崖。
私はロゼッタを睨み付けて立っていた。
彼は悲しそうに笑っている。
ガタン、と遠くで大きな音がした。どうやら、崩壊が始まったようだ。
「いつ気づいたの?ここが、いや全てが私の仮想であるということに」
「おかしいと思ったのは何度かあったよ。けれど感心したのはついさっき。君が僕の世界に来てからだ。君の言うことが正しければ完璧な仮想のできる僕が君のことを仮想する前に君はここにやって来た。それは君がたとえ僕の仮想世界にいたとしても君は僕より上位だということだ。その上、君には僕に見えないものまでここで、この場所で見えてる。だからこう考えたんだよ──君が僕にここを仮想させたのではないか──とね。そして、そんなことが出来るのは神様か仮想主くらいなものだよ。──君は?」
「え?」君は?て、何が?
「君はいつ気づいた、いや思いだしたの?最初から?」
「私もさっきよ。あなたが鳥や他の景色が見えないって言ったとき。それまでは全部忘れてたの」
『egg』を高出力で稼働させたせいだろう。自分の本当の名も正体も忘れたまま、取り敢えず学校に通ってた。そして、自ら望んだはずの世界にうんざりしていたのだ。