ながめがよいこのごろ
例えばそう、壁だ。
君を囲む、限りなく続く白い壁。
模様もなければ、凹凸もない。
完全なる白、絶対なる無。
そこに1つ、本当に小さく、飛沫のように僅かだが、黒いシミを見つけたとしよう。
たった1つ。唯一。
自分だけが知っている、完全だと思われていたものの1つの例外。
それを見つけてしまったとしよう。
………わかってはくれないだろうか?
僕は今、そんな状況にある。
人間なんて誰も変わらない、みんな結局は同じだと思っていたんだ。愛すも、愛されるも、下らない戯れ言に過ぎないと思っていたんだ。
“思っていたんだ”?
いや、違う。
“信じていたんだ”。
信じて信じて、諦めていた。
人はみんな同じ、僕も同じ。
どうせ同じなら、愛なんて、恋なんてまやかしだと信じて諦めて疑わなかった。
でも。
見つけてしまった。
僕の知る、単色のこの世界で、あまりにも異端な君を、花と例えるのはあまりにも無粋だろう。
例えるならそう、黒いシミ。
しかし、何よりも美しく、気高く、謙虚だ。
周りの全てに邪険に思われても気にしない。全てを変える力を持ちながらそれをしない。
ああ、異端なる魔女よ。愛すべき人よ。
どうか最後くらい、教えておくれ。
──次はなんと呼べばいい?