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2002~2015 其3『AA』

「おい、エロ女医。急に呼び出して何の用だ」


 この前の一件からと言うもの、私に回ってくる任務は確実にE以下と確認されたものばかりだった。Dランクを単独で撃破したのだから、いい加減実力くらい認めてもらいたいものだ。


「あら、不機嫌そうねアクロ?その顔も嫌いじゃないけど、眉間に皺ができちゃうわよ」

「原因くらい分かってるだろ。しかもお前に呼び出されたんだ」

「自業自得でしょ?対象がDランクだと分かっていながら、マニュアルを無視して単独戦闘するような命知らずには当然の対応よ。私に当たらないでよね?」


 このエロ女医が仕組んだことでないことくらいは知っている。だが電話の窓口はこいつで、こいつの口からその組織としてのしがらみがまとわりついてきているのだ。パブロフの犬じゃないが、条件反射で嫌な顔の一つくらいしたくなる。


「それで要件はなんだ。まさかエニシ狩りの心得を再教育とか言わないよな」

「訓練を終えた人に再教育を施すだけの人員と余裕はないわよ。まあアイデンくらいなら付き合ってくれるかもね」

「勘弁してくれ。私は罵られながら叫ぶ趣味はないんだ」


 アイデン教官のやり方はどこぞの海兵隊映画にも負けない暑苦しさだ。そんなコテコテの訓練が役に立つのは現実や戦場を知らない甘ちゃんだけ、最初からストイックに鍛えてきた私には耳障りなだけだ。


「以前貴方が報告してくれた内容についてよ。現場に残っていた血液サンプルの持ち主、その男性について色々調べたわ」

「ああ、その件か」

「結論から言うと、その人物の血液は未知のウイルスに感染していたのよ」

「げっ」


 未知のウイルスって、随分とSFチックだな。いや、それ以上にその血液をぶちまけた私に感染してないだろうな。


「他者に感染するリスクは今のところ発見されてないそうよ。どうも当人の体から離れると半日で死滅するそうなのよね」

「そりゃ人に優しいウイルスなこった。で?」

「その男性をトキで引取り、実際に検証してみたわ。捕獲した実験用サンプルのエニシ、その体内に付着させたところ、あっという間に全身がコアごと壊死。エニシに対して致死性のある猛毒だと結論付けられたわ」

「……そりゃ凄いな、新時代の幕開けじゃないか」


 エニシには物理的な攻撃が通用するが、コアを守る体は非常に頑丈だ。コアの種類によってはその装甲は鉄よりも固いなんてことはザラだったりする。そんな連中を即死させられるような猛毒、もしもこれを兵器として流用することができればエニシ狩りの戦い方そのものが革命的に変化することにもなりかねない。


「最初は皆目を輝かせていたわよ。でも言ったでしょ、当人の体を離れると半日で死滅するって。他の体に感染させることも、長時間生き長らえさせることも今のところは不可能って結論よ」

「新時代が終わるのも早いもんだな」

「貴方が勝手に始めたんでしょ。でもまあ、貴重なサンプルであることには違いないのだけれどね?」


 ウイルスの仕組みを解析できれば、さっき思ったことも実現不可能ではなくなるわけだしな。是非とも頑張ってもらいたいもんだ。


「興味深い内容と言えば興味深かったが、わざわざ私に報告する必要はあるのか?そりゃあ気にはなっていたけども」

「ここからが本題よ。そのウイルスの研究は進めていくんだけど、同時に実戦にも投入できないかって上が言ってきてね?その男性にエニシ狩りになってもらおうってことになったのよ」

「……はぁ?」


 エニシ狩りになる為には相当な量の訓練が必要となる。才能があるからとか、そんなことは関係ない。そもそも人間の身体能力ではエニシにはまるで歯が立たないのだ。だからモルギフトの力を借り、その人ならざる力を制御しながら戦う術を身につけなくてはならない。

 一般人をいきなりエニシ狩りにするなんて、子供に軍人として戦場を駆け抜けろと言うより無謀なことだ。


「まあ、そう思うわよね」

「そりゃそうだろ。その男ってのはいくつなんだ?」

「二十八かそこらだったわよ」

「もうおっさんの域に片足を突っ込んでるじゃないか。今から訓練って、下手すれば訓練で死ぬぞ?」

「それについては満場一致だったわ。でも現場に同伴する支援者としてなら、最低限の訓練だけでも導入することができるだろうって」


 エロ女医はそう言ってパソコンの画面を見せてくる。そこには奇妙な形をした篭手のような物の設計図が描かれており、心なしかシリンダーのような形をしている。


「なんだこりゃ」

「ブラッドガントレット、そのまま血の篭手って意味なんだけどね。装着者の腕を経由して新鮮な血液を常に循環させ、必要な時にその血液を専用の弾薬に補填する道具よ」


 ああ、なるほど。宿主から取り出したウイルスは半日で死滅する。なら宿主を戦場に連れていき、その場で血を回収して武器にするってわけか。そうすりゃあの時の威力を持った弾丸を常時持ち運びできることに……でもダメだろ、それ。


「それをつけた素人を戦場に連れて行くってのか?一緒になった奴が死ぬだろ、それ」

「それは貴方でも?」

「……おい、まさか私を呼んだ理由って――」

「そうよ。弾丸として取り出すんだから、そこで察しなさいよ。強力なウイルスではあるけど、それは一般人の体内に流れる血液量しかないのよ。だから無駄に使うわけにはいかない。少ない銃弾を確実にエニシに命中させられる銃使いともなれば、そりゃあ貴方に白羽の矢が立つわよ。アクロバット?」


 冗談だろ。いくら一撃でエニシを屠れる弾丸と言っても、一般人のお守りをしながらエニシを狩れるはずがない。常に生と死の境界で戦い続けなきゃならない世界で、そんなリスクを背負いたいわけがない。


「んなもん、断――」

「もしも貴方が受けるのなら、上は貴方にCランクまでの任務を割り当てても構わないと言っているわ。場合によってはもっと高難易度の任務にも参加する権限を与えるともね」

「……いくら私でも、そんな見え透いた餌に食いつくと思うなよ?」

「あら、いいの?このチャンスを逃せば、パートナーが見つかるまで雑用みたいな仕事を延々と繰り返すのよ?」

「んぐ……」


 これはほぼ脅しに近い。命の危険を冒して未知の兵器の実験台になれ、さもなくばお前に仕事はやらないと。さては最初からこのつもりでここ暫くは私に雑用を押し付けていたんじゃないのか。


「そう怒らないで?そんなわけで貴方を呼んだのはこの後の説明に立ち会わせる為なのよ?」

「立ち会わせてどうするんだ。説得でもしろってのか」

「いいえ、貴方は話を聞くだけでいいわ。将来パートナーになるかもしれない相手のこと、きちんと把握しておくようにって貴方の先生からの命令よ」

「……先生が?」

「貴方を推薦したのも貴方の先生よ。せっかく貰った機会なんだから、無下にしないことね」


 先生は私に色々としてくれている。だけど今回のことは……いや、そう言うことなのか?このままでは私は歳を重ねるまで雑魚の掃除しか与えられない。若くから鍛えてきたこの技術を、満足に振るえないまま腐らせるくらいならいっそ死地に飛び込めと?


「そもそもまだこの話は当人にも伝えてないのよ。本人が了承すればって話だし、今から胃を痛めても仕方ないわよ?」

「……こんの」


 憤ったり考えたりしただけ損した。そんなもん、断られるに決まっているだろ。一般人にエニシの存在を説明して、今後そいつらを仕留める仕事につけと言われて快諾するような馬鹿が何処にいるってんだ。


「トキとしてはエニシ狩りとしてのスカウトは無理でも、状況における協力者としては確保するつもりなのよね」

「大掛かりなエニシ狩りの際に連れて行く感じか。大型とか多人数で対処する時には役立ちそうではあるな」

「だからあんまり素人を威嚇しないでね?」

「善処はする」


 ◇


 特異災害駆除機関へと案内され、最初に行ったのは採血と問診だった。そりゃあこの体に入っているウイルスを調べる為に引き取ってくれたんだし、そうだよなって感じではある。ただ問診についてはこのウイルスに感染した経緯などを色々尋ねられたのだけれど、心当たりがまるでない以上は答えようがなかった。

 待遇については病院よりも遥かにマシだった。用意してもらった個室にはテレビどころかパソコンまで用意されており、冷蔵庫に洗濯機まで完備と言った具合だ。外出できないだけでマンションの一室で生活を続けるのと変わりがない。

 欲しい物は申請書に書いてお金を払えばすぐに用意してもらえ、金銭についてもウイルスの研究を行うにあたって、俺にはある程度の謝礼が支払われているらしい。具体的な金額はまだ確認していないのだが、少なくとも生活に支障がない程度には用意してくれるらしい。

 不満がないと言えばないのだが、なさすぎてちょっと不安だったりもする。一体今後どんな扱いを受けるのやら……。

 そんなことを考えていると、係の人が俺を呼びに来た。どうやら主治医となる先生から話があるとのことだ。言われるがまま案内され、医務室のような場所へと通される。

 そこにいたのは二人の若い女性。一人はえらい蠱惑的な感じのお医者さんで、もうひとりはトレンチコートを着込んだ……スパイのコスプレ?


「いらっしゃい。ようこそトキへ。私のことは『女医』と呼んでね」

「……え、女医さん?その、お名前は……」

「トキに所属する者でエニシ狩り、特定の責任を受け持つ者達は皆本名を使っちゃいけない決まりなの。だから普段からコードネームで呼び合っているのよ」

「それで女医……。他に女医さんがいたら混乱しません?」

「いるにはいるけどね。でもその人も別のコードネームがあるから大丈夫よ」


 女医さんは笑いながらコーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ、一つを俺に渡してくる。あ、これ結構高い豆使ってるな?


「それで……そちらの方は?」

「この子はコードネーム『アクロバット』、これからの話をする上でちょっと必要だから呼んだの。エニシ狩りって言えば分かりやすいかしら?」


 エニシ狩り、つまりはエニシを狩る者ってことだよな。こんな若い子が化物退治の専門家ってことなのか。見たところ女医さんは二十代半ばだけど、アクロバットさんは十代後半から二十代前半ってところだぞ。


「へぇ、専門家がいるって話はテレビでも聞いていましたけど……それって制服なんですか?」

「格好や装備は個人の自由よ。この子の場合は銃を使うから、こんなトレンチコートを着てるのよ」

「あー。日本で私服の人間が銃を持ち歩いていたら目立ちますものね」


 まあ別の意味で目立ちそうではあるんだけどね。無愛想っぽいけど可愛いし。


「ところで貴方、エニシについてはどれくらい知っているの?」

「どれくらいと言われましても……。テレビやネットで見て聞いたくらいのものです」

「そう、じゃあ簡単に説明するわね」


 女医さんから聞かされた話はとてもじゃないが信じがたい話だった。エニシが人と縁のある物が人の傍から離れることで発生するって……。


「付喪神みたいな感じですかね」

「大体そうね。実体はあるし、放っておくと人間を殺しまくるけど」

「うへぇ、怖いですね……。でもなんでまた俺にそんな説明を?」

「実は貴方の体の中にあるウイルスだけど、そのエニシにとっては猛毒らしいのよ」

「えっ。……でも前の病院じゃ無害だって……」

「動物実験でも無害なのは確認が取れているわ。でも同時にエニシに対する実験では劇薬であることも確認が取れているの」


 驚いたことよりも、なるほどと言った気持ちが強かった。エニシに効果的だから俺のウイルスを研究したい、エニシに対抗する組織らしい理由だ。でも劇薬って……そりゃあウイルスだからそんな可能性があると言ってもなぁ……。


「実用的なんですか?」

「――最初の感想がそれってのも珍しいわね。でも好きよ、その性格。今のところは非実用的といったところね。貴方の体の中にあるウイルスは体から出て十二時間で死滅するもの。その制限をどうにかしない限り、兵器運用は無理よ」


 その辺の話は前の病院でも軽く聞いている。正直自覚症状がないので『そうだね、不思議だよねぇ』って感想しかでないのだけれど。俺の体から取り出したウイルスを保存する術はない。つまりは培養して増やすと言った手段がないのである。


「体調に不調が出ない範囲では血の提供はできるんですけどねぇ」

「それは嬉しいのだけれど、貴方の血肉よ?もう少し出し惜しみしてもいいと思うのだけれど。でもそれって必要とあればエニシを狩ることに協力してくれるってとってもいいのかしら?」

「日本政府の機関ですよね、ここ。日本人ですし、国内の治安改善に協力するのは義務……って言うほど真面目じゃないですけど。協力できる範囲でなら構いませんよ」


 内心では割と打算的なことも考えている。そもそも断ったところで体の中にあるウイルスは消えないのだ。治療を続けてくれる可能性はあっても、今後の扱いが冷遇されてしまっては辛い。他の病院に回されてしまえば、それこそいつまでも隔離病棟から出られないわけだし。


「……正直に言うと、貴方に協力してもらえるように説得するつもりだったのよ?」

「学生時代は説得し甲斐がないとよく言われてましたね」


 女医さんとアクロバットさんは顔を見合わせる。拍子抜けさせてしまったのだろうが、逆に断る理由を考える方が難しいくらいなのだから仕方ない。


「手間が省けたはずなのに損した気分ね」

「なんかすみません。話ってこれで全部ですか?」

「んー、実はもう一つ。貴方が血を提供してくれることで、今後エニシを狩る際に貴方の血を武器として使うことができるかもしれない。だけどもう一つ、効果的に使う方法があるのよ。端的に言えば、エニシ狩りにならない?」

「……冗談ですよね?三十路前のいい年頃の男ですよ?」


 自慢じゃないがこの人生の中で体を鍛えたことなんてまるでない。強いて言うなら体育の授業とか、休日にプールで遊んだりしたくらいのものだ。


「その台詞、私も言ったのよ?でも上司曰く、貴方が現場で的確に判断して血を提供できるようになれば、それはより効果的にエニシを狩ることができるのではないかって」

「そりゃあそうですけど、エニシって化物なんですよね?熊より強いって聞きましたけど」

「熊どころか、怒り狂った象よりも危険よ」


 動物園に言った時、飼育委員さんから貰ったバナナを象にあげた記憶が甦った。ちょっと意地悪をして取られないように強く握っていたのだが、あっさりと奪われてビビった時の思い出だ。事前にトイレに行っていなければちょっと漏れていたかもしれない。


「……一応具体的な説明を求めても?」

「あら、無理だって断言しないのね?」

「まあ流石に一般人を一人で化物にぶつけるとか、そんな酔狂な真似はしないだろうと思いましたので」

「ええ、それはもちろん。エニシ狩りは基本二人組で行動するようになっているの。連携した方が強くて安全だし、もしも手におえない場合、片方だけでも逃げ帰れるようにね」

「ええと、つまり俺は戦闘役の誰かのパートナーとして、血の提供と支援補佐をするってことですか?」

「察しが良くて助かるわ。貴方にはエニシ狩りのパートナーになってもらいたいのよ」


 化物退治のエキスパート……高校生くらいまではそんな妄想をしたこともあったけど、流石にこの歳でそれを目指すのはどうかと思う。正直ガタイのいい兄ちゃん相手にだってビビる自信があるんだぞ?


「女医さん個人としてはどう思っているんですか?」

「私個人?うーん……不可能ってほどじゃないと思うわ。例えば戦闘能力にずば抜けたエニシ狩りがいたとして、貴方の血があればその人物はさらに強くなる。後は貴方が本部からの情報とかを上手くまとめたりして、物資の手配とかをするとかね?」

「パートナーと言うより、マネージャーですね」

「もしかしたら貴方も戦えるようになるかもしれないけどね?」

「いやいや、流石にそれは……」

「なるかもしれないのよ。モルギフトを使えばね」

「モル――?」


 女医さんがアクロバットさんへと目配せをすると、アクロバットさんは俺に手を見せてきた。指には指輪がいくつもつけられており、そのデザインはなんと言うか地味だ。


「エニシ狩りはこのモルギフトと言う道具を与えられているの。エニシが持つと言われている特異性を発動し、超人的な力を得たりすることができるわ」

「……本当ですか?」

「アクロ、試してあげて。あ、怪我さしちゃダメよ?」


 アクロバットさんは無言のまま俺の方へと近寄り、俺の座っている椅子を掴んだ。そしてそのまま成人男性が座っているはずの椅子を片手で持ち上げてみせた。


「う、うおおっ!?」

「凄いでしょ?モルギフトはその特異性ごとに適合した者にしか扱えないのだけれど、大抵はその者の身体能力も上げてくれるのよ」


 確かにこんな魔法のようなアイテムがあるのなら、こんな冴えない青年でもヒーローになることだってできるのかもしれない。ただ自分にはそんなヒーローになれそうなイメージは微塵もわかないのだが。

 アクロバットさんは椅子を降ろし、定位置へと戻っていった。もう少し話とかしてくれてもいいのに。


「もちろんいきなりエニシ狩りになって実戦に出ろってわけじゃないわ。本来エニシ狩りになるには長い訓練期間を経て、正式な採用試験を突破する必要があるの。貴方がその気なら、その採用試験に向けて訓練を行ってもらうわ」

「あ、採用試験があるんですね。うーん、それなら……」

「条件付きなのに逆にやる気になるのね?」

「採用試験でしっかりと適正を見極めてもらえるのなら、とりあえず試してみるくらいはいいかなと」

「とりあえずで試験を受ける人って貴方が初めてだと思うわよ?」

「でしょうね。でも俺も結構暇をすることになるでしょうし……」

「あー……そうね。貴方の立場のことすっかり忘れていたわ」


 もしも俺が社会人として普通に働いていたのなら、化物と戦う為の採用試験に向けて特訓するとかそんな余裕はなかっただろう。だけど今の俺はウイルス保持者と言うことで外出許可すら貰えないのだ。研究に協力する対価で多少のお金はもらえるだろうが、限られた血液で常に研究するわけにもいかないだろう。

 要するに暇なのだ。その訓練とやらも運動不足を解消するにはもってこいかもしれない。


「じゃあとりあえずは採用試験を受けることを前提で、これから訓練を行ってもらうことになるけど、いいかしら?」

「はい。ダメならダメで、現実を知るのにちょうどいいでしょうしね。その時は血の提供だけでいいんですよね?」

「そうね。完全に適正のない者に死地に向かってもらうことはさせられないもの」


 女医さんとしては何とも味気のない気分なのだろうが、それは今の俺の気持ちも同じだ。俺の体の中で突然発見されたウイルス、その使い道が見え始めていた。だからなのだろうか、こんな話なのにすんなりと受け入れている。

 本当なら真剣に考え、答えを出して行くべきなのだろうが……自分だけにしかない価値、それに何か運命じみたものを感じてしまっている自分がいる。

 ……もういい大人なのになぁ、心は少年のままで困ったものだよ。


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