上る階段
おいしそうな料理のにおいが鼻孔をくすぐる。
「おはようシャーナ。」
「おはようございます、シュンヤ様。朝ご飯の準備はできてますわ。」
「ああ、あれ?シャーナのは?」
「いえ、私はシュンヤ様が食べ終わった後に食べます。」
「いや、一緒に食べよ?せっかく人が増えたんだし。」
「わかりました。」
とくに何の変哲もない会話をしながら食事を続ける。シュンヤにとっては今まで話し相手はいたが、目に見えるわけではなかったので、どこか寂しいという感情があったのだろう。
「シュンヤ様は、今日はどんな予定があるのですか?」
「今日は、畑の後に鍛冶をしようかなって考えてる。」
「そうですか。シュンヤ様は確か、魔物の討伐もするんですよね?」
「ああ、そうだよ、今日はいかないけど。」
「それだったら私も魔物の討伐手伝いますわ。」
「シャーナも、戦えるのか?」
(バーカ、シュンヤよりもシャーナのほうが強いぞ?)
「おお、ヘーパイトスおはよう。そうなんだ、ちょうどいいや、シャーナは魔法も得意なのかな?」
「はい!お教えしましょうか?」
「そうだね、よろしくお願いするよ。」
(おいシュンヤ、今日の鍛冶はステップアップさせるから、午後はまるまる開けておけよ)
「わかった、じゃあ、午前は畑仕事とシャーナに家庭教師をお願いするよ。」
「はい、任せてください。」
早速作業開始。まあ、畑の手入れといっても、この島は浮いていて、動物や魔物の被害は考えなくてもいい。葉についた虫を取り除き、雑草を刈っていく。もちろん、刈るのに使う道具は、新しく新調した刀だ。レアの武器はすべて素材に戻し、再度打ち直して、ハイレアにした。
「うーん、今日も快調だな。」
改めて空を見上げるとすごい。雲一つない快晴だ。いや、雲はあるにはあるが、真上ではなく、この島と同じ高さの横にある。
いつも通り、畑仕事を終わらせた。戻ると、シャーナは洗濯を干していた。
「やあ、ただいま。」
「おかえりなさいませ。ちょうど洗濯物はこれだけのようなので、勉強を始めましょう。」
魔法を学ぶ上で、シャーナにステータスを見せてもらった。
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LV90
職業:魔法使い
HP:A
MP:AA
スキル:気配遮断 魔法辞典 MP上昇 木工
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「うわ、LVも高いけど、MP:AAってすごいな。」
(確かにシャーナはすごいが、とびぬけてやばいって程ではないんだぞ?)
「シュンヤさんは?」
俺は素直に見した。
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LV36
職業:鍛冶師
HP:A
MP:A
スキル:鍛冶 経験値2倍 試し斬り 鑑定眼 魔術庫 確率補助 付与魔術辞典
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「LV36で、Aに達してるなんて、やっぱりすごいですよシュンヤさん。」
「ほんとに?」
「ヘーパイトスさんから、このステータスやスキルについての説明は?」
(んにゃ、俺が教えたのは鍛冶師についてだけだな。)
「まだ何かあるの?」
「人によってまちまちですが、LVが限界を迎えた時に限界突破というスキルが出るんです。そのスキルを選択すると、LVがリセットされ、職業も今のと違い上位色が解放されるのです。眼科医突破されていない方をステージ1と呼び、ステージは上がるほど上げづらくなり、人によっては、ステージの回数限界もその人の可能性しだいなのです。」
「そうなのかヘーパイトス?」
(ああ、ステージを上げまくれば、俺の作ったお前の鑑定不可の武器も作れるようになる。まあ、今は無理だけどな。)
「それに、LVが限界になった人でも、ほとんどの人がS以上のHP及びMPには至れないのです。だから、すでにAのシュンヤさんはすごいんです!」
それから次に魔法について教わった。魔法はそもそも魔力を感じなければ使うことができないのだが、この前鍛冶でハイレアを打ったとき、すでに魔力を知覚し、使用していたため、すぐに次のステップへ移動できた。魔力には属性が様々あり、基本は本などで学ぶが、人によって、その属性の使い方や、理解度が深ければ深いほど、イメージだけで発動できるらしい。呪文や詠唱というのは、言葉を発することで、それがキーとなり魔法が発動される。
ちなみに、俺は後者のイメージ方だったため、吸収するスピードが限りなく早かった。
「さすがシュンヤ様です。魔力を使えればあとは、イメージで呪文を使う私たち、魔法使いと同じレベルの魔法を使えます。」
「ああ、ありがとうシャーナ。」
(んー、終わったか?)
「ああ、お前がステップアップするって言ったから早めに切り上げてくれたんだよ。」
(ああ、そうだったな。今日のはなかなかハードだぞ?)
「ああ、望むところだよ。」
トイレにい行き、手を洗っているとシャーナの呼ぶ声が聞こえた。
「ご飯できました。」
食事を食べ終わり、顔を洗い気合を入れるシュンヤ。
(気合が入ってるな。)
「ステップアップするんだろ?」
(ああ、はじめるか。)
火炉の隣には似た同じようなものがあった。ドアを開けると中には綺麗な青色の炎のようなものが燃えているのが見えた。
「これは火じゃないな。」
(魔炉だ。普通の鉱物を鍛えるときには使えないが、特殊な素材ならこれが一番適している。)
「特殊?」
(この前洞窟に行ったとき、ロックスネイルの鉱石のような殻を持ち帰っただろ?あれをこの中にいれ、今までと同じ工程で作業しろ。)
「うん?ステップアップって、素材を変えるだけ?」
魔炉に素材を入れ、そしてたたく。だが、今までの鍛冶とは違い、違和感が脳の中でゴチャゴチャと渦になる。
「なんだ?違和感が感じる。どういうことだヘーパイトス?」
(感覚をつかめ。)
「え、それだけ?」
(…)
「だんまりか。まあ、何とかするしかない。」
二時間近く金槌を振ったのだろうか、だんだん違和感がなくなってきた。違和感の正体は、魔力だった。マロに入れた素材は、入れる前よりも、魔力を帯びている。そのため、ただ普通に打っても意味がないのだ。金槌に魔力を纏わせるように。
違和感はなくなった。しかし、それとは別に違う問題が今度は出てきた。長時間うっていることもあるだろうが、うまくコントロールできない。そのため均等に打つことも、力加減さえ難しくなってきている。
失敗、失敗。何度も失敗し続ける。
カーン、カーン。
火が完全に落ちてもまだ打ち続けている。
「シュンヤ様8時間以上もまだ、打ち続けているんですか?」
(ああ、そうだよ。)
「何を作ってるんですか?」」
(魔物の素材を使った魔剣だよ。)
「え!?それはいくら何でも無理ですよ!いくらの見込みの早鍛冶師だといっても。魔剣を打つには、それ相応の経験と、LVが必要なはずです。ステップアップって、どれほどの段階を無視しているんですか!」
(君も気づいてるはずだよ。っ普通、AクラスのHPやMPは職業が勇者や英雄クラスでない限り、こんな初期段階でAになるはずがないんだ。それに、魔剣が打てるのは最低でもAクラスだ必要。かれは、イレギュラーだが、満たしている。)
「でも…」
(彼の邪魔はしないでね?別に、Aクラスの魔物を倒せだなんて無理なことをさせているわけではないんだから。命には何の害もない。)
「しかし…。」
(今、君と僕ができるのは、彼を見守り、サポートすることだけだよ。)
「…。」
シャーヤは、納得はしていないが、ヘーパイトスの言われたとおりに、見守り続けることを選択した。