閑話 勇者
光が輝く中、4人の生徒が目を覚ます。
「おいおい、なんでここは!」
低い声が部屋の中にこだまする。最初に声を発したのは内藤大地。
「落ち着けダイチ。モエカにリクドウさんは大丈夫ですか?」
声太なダイチをなだめ、ほかの女子を心配する武藤勇仁。
「うん、大丈夫だよユウちゃん。」
「だ、大丈夫です会長。」
なんとか声を振り絞りながら自分の身に特に異常がないか確認し返事をする、綱島萌香と六道優華。
光のせいか、変頭痛が頭に響く。
「ようこそ、おいでくださいました四人の英雄よ。」
四人の前には、頭を下げている人物と、立派な甲冑姿の騎士がいた。
「おい、ここはどこなんだよ!」
「おちつけ、ダイチ。」
「すみませんが、今は質問には答えられません。とにかく、オウガお待ちです。そこでなら、王が答えてくれるはずです。ついてきてください。」
目の前にいる、いかにも魔法使いだという格好の女性に、疑惑を向けながらもついていく4人。
魔法使いについていくと、目の前には大きくとてもきれいに装飾された扉があった。
音もせず開くと、目の前に号かな椅子に座る人物が4人いた。
「王よ、選ばれ師四人の英雄を連れてきました。」
「うむ。リーリンご苦労だったな。」
ユウジンからしてみれば、父の様な政治家と全く似ても似つかない体格と風格を伴う男が目の前にいた。
「ようこそ、英雄たちよ。グランハルト王国へようこそ。私が、ラインバッハ・グランハルトだ。そして、妻のレイン・グランハルトに、娘のミーティア・グランハルト、そしてむす「俺がライアス・グランハルトだ!」息子だ。」
全く空気が読めていない王子の横入りな自己紹介のおかげか、少し緊張や警戒が緩む4人の生徒。
「さて、英雄諸君。君たちは、君たち自身のことを今どれだけ理解しているのかね?」
四人の生徒は、ポカーンとした顔をした。
「ふむ、説明する必要はあるな。」
四人は、王様からこの世界に関する知識について大雑把に説明した。
魔法の存在。魔物の存在。四人のいた世界とこの世界エインハイムは別世界だということ。そして、召喚を行ったということ。
「質問があります。」
この説明を受け、唖然としている3人を置いて、話を続けるユウジン。
「ふむ、なんだ?」
「なぜ私たちを召喚なされたのですか?」
「たしかに、そなたたちは召喚された。しかし、この国が、ひいてはエインハイムにいるものがそなたたちを召喚したわけではないぞ?」
「まさか、神様なんていうんじゃ…」
「その通りだ。我の娘ミーティアが信託を受けた。」
「なんのために?」
「わからん!」
「え、それじゃあ地球には帰れないの?」
この時唯一先に声を上げたのは、モエカだった。
「ああ、安心しなさい。機関の魔道具はある。ただ人数分だと数年はかかる。それまで、グランハルト王国がそなたたちを保護する。不自由はさせないから、安心してほしい。」
話が終わり、4人は部屋を案内された。
「ユウジンどう思う?お前ならうそを見破るの得意だろ?」
「うーん、おおかたは真実だと思う。ただ、なぜ召喚されたかについては、知らされてなくても予想はつけられているんじゃないかな?」
「そうなの?」
「ああ、たぶんね。でも、悪意があるわけじゃなさそうだし、身を保護してくれるらしいから、しばらくは王様に従おう。」
「私も会長に賛成です。」
「わかった、ユウジンについていくぜ。」
「うん、私も!」
四人の話し合いは無事にまとまった。
そして、ある程度時間が過ぎ、窓の外が暗くなってきたころ、四人は王様たちと夕食を囲んだ。
「それでは、その地球というところには、魔法も魔物もないし、いないのか?」
興奮して四人に興味を向けているのはライアスおうじだ。
「そうです、王子様。」
「ははは、ダイチ敬語はいらん。気にするな、ライアスと呼んでくれ。」
「あ、本当ですか?ライアスは魔法使えるのか?」
「ちょっとダイチしつれいだよ」
「気にするなといったじゃないかモエカ殿。そうだ、この世界について、それと魔法や剣については知っていて損ではない。明日から俺と一緒に授業を受けないか?」
「勉強かー…。」
「ダイチは勉強嫌いなのか?」
「ははは、ライアス。ダイチハできるにはできるけど、好きではないんだよ。どちらかというと、たぶん剣などの武器にかんしての訓練のほうが好きだと思うよ。」
「ははは、ダイチ。勉強は俺も嫌いだ!ユウジンはなんでもできそうだな。」
夕食が始まり、ライアス王子の性格があって、話に簡単に溶け込めた4人は、楽しい夕食の時間が過ぎっていく。