プロローグ
どうも、やもな~です。
今回書いた作品は、念話(武器製作とカウンターのスキルで無双してもいいですか?)のリメイク版になります。
本編とはほとんどが違うので、前の作品のことはなるべく忘れてください。
ある日の昼頃、一人の少年が一冊の小説を読んでいた。
その小説は、異世界に飛ばされた主人公が、最強の力で魔王を倒すという内容だった。
彼は、異世界転移とチートのジャンルがある小説を、中学の頃読んでから、大好きになった。
家には、様々な異世界転移系の小説がある。
彼の名前は神谷 光治、一般的な高校生である。
身長は174cmと平均的、運動が苦手ではないが、得意でもない。
多少筋肉はあるが、決して鍛えているわけではない。
テストなどでは平均80点を出すが、決して頭が良い訳ではない。
光治はクラスであまり人気がない。
人気がないと言っても、嫌われているからではなく、単純に目立つ者が多いだけだ。
しかし光治は、目立つのが好きではないので、今の状況に満足していた。
光治は、集中し、黙々と小説を読んでいた。
光治のクラス、2年4組は、昼になるとクラスのほとんどが他クラスに行く。
今クラスにいるのは、光治を合わせて5人しかいない。
全員比較的地味な連中だ。
それぞれが、それぞれにあまり関心がない。
光治はそう思っているが、実は違った。
光治の前にいる摩玉 幸希は、そのとなりの如月 綾菜と恋人であり、光治の後ろにいる乘坂 秋音と弥縞 御影も恋人である。
なので、実質ボッチは光治だけである。
そんな事には気付かず(と言うか興味無し)、光治は小説を読み進めた。
しばらくして、光治はあることに気付き、教室の後ろに向かった。
時間を見ると、あと5分で授業が始まる。
摩玉達も光治の行動に気付き、次の時間の準備をし始めた。
そんな時、不意に光治の頭の中に何かの声が聞こえてきた。
(………けた……)
その声に、光治は後ろに振り返った。
しかし、目にしたのはいつも通りの教室だった。
光治は安心して、再びロッカーの中の教科書を取り出した。
次の教科は、数学だった。
光治は、教科書を持って、自分の机に向かった。
机に向かう途中、光治はあることに気付いた。
(あれ?時計が無くなってる?)
光治は、いつもとは少し違う教室を見て、違和感に感じた。
そして、そう思った矢先、突然地面に巨大な魔方陣が出現した。
そして、ほとんどの人が驚く暇もなく、光治達5人は、教室から姿を消した。
気が付くと、知らない空間にいた、周りを見ても何もない。
他の4人も来たが、お互いがお互いを心配していた。
光治が自分だけ1人と言うことは、ここで気付いた。
「こ、幸希君、わ、私達、どうなるの?」
「だ、大丈夫だろ!きっとどうにかなる。それに、綾菜は俺が必ず守る!」
幸希と綾菜は、光治の読んできた小説集で、一番ありそうな恋人のやり取りをしていた。
「ど、どうするの秋音ちゃん!?」
「きっと大丈夫だよ御影ちゃん!」
秋音と御影は、お互い抱き合っていた。
何か見てて悲しくなったので、光治は逃げるようにそっぽを向いた。
すると、光治の向いた方向に、一人の少女が立っていた。
光治は、何を言えば良いのかわからなくなり、少女を見たまま黙った。
今のこの空間の空気を言えば"カオス"だ。
そんな空気に耐えられなくなったのか、少女は咳払いをした。
その声に、摩玉達が少女に注目する。
少女は、全員が注目したのを確認すると、突然妙なことを言い出した。
「やあみんな!私の名前はテュラリム、女神であり、君達をここに呼び出した張本人だよ!」
光治達は、テュラリムの言葉に唖然とした。
そして、光治以外は、テュラリムの話を否定し出した。
光治はと言うと、(女神居たんだ)と言う物凄いどうでも良いことを考えていた。
「ほ、本当に女神様なんですか?」
テュラリムの発言が気になりすぎたのか、秋音はそんなことを聞いた。
テュラリムは、黙って首を縦に振った。
その反応に、光治以外は同様し出した。
光治はと言うと、(数学始まってるのかな?)と言うもはやどうでも良いを通り越して物凄く呑気なことを考えていて、テュラリムのしたこと言ったことを、全く気にしていなかった。
そんな光治を見て、テュラリムはため息を吐いた後、少しだけテンションを下げながら全員にこう言った。
「君らには異世界に行って貰いたい。あ、君達のいた世界では一時的に君らの記憶はみんなの脳内から消えるから心配はいらないよ」
その言葉に、さすがの光治も「え……?」と口にした。
もちろんその場の5人全員が同じ反応だった。
その反応を見て、テュラリムは下げていたテンションをまた上げた。
「ちなみに、魔王を倒さないと元の世界には帰れないよ?」
その言葉に、光治だけキレた。
「おい、いきなり呼び出してなに言ってんだお前は、なんで俺らが魔王を倒さないといけないんだよ、せめてこの小説みたいな感じにしろ。」
そう言って光治は、一冊の小説を取り出し、あるページを見せた。
そこには、主人公が異世界に呼び出される際に、身体能力等が格段に上がったと言う内容が書かれていた。
それを見て、テュラリムは少しだけ考え、笑顔で光治達にこう言った。
「いいよ、あとついでに1つだけスキルをあげるサービスもしてあげるよ。」
その言葉に、光治は安心したようにため息を吐いた。
テュラリムは、5人を順番に並ばせた。
順番は、幸希、綾菜、秋音、御影、光治の順だった。
「じゃあ最初は幸希君、欲しいスキルを言ってごらん」
「自分は綾菜を護りたいので防御系のやつがあればそれをお願いします。」
幸希のリクエストに、テュラリムは「了解了解~」と言い、幸希にスキルを授けた。
幸希が終わり、次は綾菜の番だった。
「じゃあ次は綾菜ちゃん、どんなスキルをお望みだい?」
「はい、私は回復させる事が出来ればいいので回復系をお願いします。」
綾菜のリクエストに、テュラリムは先程と同じように綾菜に回復スキルを授けた。
その後、秋音と御影は、魔術と剣術を選んだ。
そして、光治の番になったとき、突然テュラリムが幸希達の方を向いた。
「ちょっと光治君には話があるから君達は先に行ってて。」
そう言ってテュラリムは、幸希達の足下に魔方陣を出現させ、そのまま幸希達を異世界に送った。
残された光治は、唖然としていた。
自分を残して他の4人が異世界に送られたからだ。
ここで光治は、異世界転移系小説の毎度の決まりを思いだし、わかりやすく動揺した。
そんな光治を見て、テュラリムは笑いを堪えきれずに笑い出した。
光治は、何が面白いと言いたげな表情をしてテュラリムを見た。
テュラリムは、笑いながらも光治にこう言った
「君が予想してる通り、幸希君達は勇者として召喚されたけど、君は"巻き込まれた者"だよ!」
その言葉を聞いて、光治は今度はわかりやすく落ち込んだ。
その反応を見て、テュラリムは更に笑った。
光治は、反応にムカついて、今度はきつく睨んだ。
光治に睨まれ、テュラリムは苦笑いしながら少しだけ震えた。
「お、怒んないでよ……。」
そして、若干小声になった。
「お、お詫びとしてスキルを3つあげるよ。」
テュラリムは、小声だが、光治聞こえるようにそう言った。
光治は、ほんの少し悩んだ後、自分のリクエストを言った。
「じゃあ"武器製作"と"念話"と"反撃"で。」
光治は考え抜いて最近のチートジャンルの小説ではあまり見かけないスキルを選んだ。
もちろん今の光治は巻き込まれた者なのでチートだと思い込んでいる。
テュラリムは光治の考えていることがわかるので、心の中で「イタイ……。」と言っている。
しかし、女神は望まれたことはしなくてはいけない。
「いいよ、それと、君だけ草原からのスタートにしてあげるよ、レベル上げのためにね」
テュラリムは、そう言って光治にスキルを与え、足下に魔方陣を出現させた。
「じゃあ、行ってらっしゃーい。」
テュラリムの言葉を最後に、光治はテュラリムの手により、異世界に転移した。