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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と魔導と教師のお仕事?
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自給自足、ですか?


 ――精霊、なぁ。


「しんど……」


 ロシェトナの夢のことを思い出していた所にダリウスの弱音が聞こえた。


「太陽が出てるうちにテント張らないと寝るとこないぞ、お前たち」


 キャンプ当日。

 早朝から山を二時間半登って、傾斜の少ない場所を探し出した。


 目の前でダリウス・ロシェトナ・ユンの三人が息を切らして、地面の上で倒れこんでいる。キャンプ道具の入った鞄を全員が背負ったままだ。


 (ツタ)や葉が伸び放題樹木に泥に近い地面は生徒たちの体力をあっという間に奪っていったようだ。

 道中は日の光があまり入ってこないことで視覚的にも辛いのだろう。


 俺は普段から薬草摘みで山に入るから当然へっちゃらだ。今も休憩なしで周囲の様子を確認して戻ってきたところだ。


 ヤシュヤは鼻歌を歌いながらテントを張っている。

 武術を教えているだけあり、まだまだ動けそうだ。


「それにして意外だったのはリオンだな」


 リオンはヤシュヤと一緒にテントを張っている。


 山の中を歩いている時、黙々とリオンは俺の三歩ほど離れた場所を陣取っていた。

 歩くスピードは生徒に合わせて遅くしている。それでも山登りに慣れてない人間からするとまだ早いだろう。実際、俺が三歩進む頃に生徒たちは二歩目を踏み出していた。


 平気そうな顔をしているリオンを除いて。


「山に慣れてるのか」

「田舎が山だらけで一番近い街へ行く最短ルートが山を越えるルートなんです。街へ買い物に行くときは基本登ってたから慣れてるのかと」

「あー、だから息も切らさないし、木の枝の避け方が丁寧なのか」


 進行に邪魔な枝をリオンは優しく押さえて、ゆっくりと手を放す。慣れていない人間は枝を無造作に手で払う。

 

 枝がしなって、後方の人間に当たることを考慮しているということだ。


「そんなとこまで見られているなんて思いもしませんでした」

「どんなものでも観察しておく方がいいぞ。魔法師同士の戦いなんて観察と嘘の応酬だ。何がヒントになるかわからない」


 リオンが大きく頷く。


「さっさと起きろ。全部一人でやれとは言わないが出来る限りは一人でやってもらうからな」

「……悪魔、教師」


 ロシェトナの呟きがはっきりと聞こえた。


「なんとでも言え。俺はやらなくちゃいけないことがあるんだよ」


 俺はいつもの鞄から水の入った二本のガラス瓶と試験薬の詰まった小箱を取り出す。そして小箱から白い粉と緑の液体をそれぞれのガラス瓶へ。

 

 粉薬をいれた水は特に変化はない。緑の液体を入れた水は瓶を一回横に振ると黄緑に染まる。


「何やってんだエセ教師」

「水質の検査だ。近くに川があったがそのまま飲めるのか確認しとかないといけないだろう」


 白い粉は魔素濃度の検査薬。緑の液体は水質を測る検査薬だ。

 水質が悪いだけなら煮沸して飲めるかもしれないが、魔素濃度が高ければ飲み水として不適切だ。熱で魔素の毒性は消えない。


「なんか薬師みたいですー」

「薬も作れるぞ。必要ならそっちも教える」

「さすが、ごちゃまぜラナティス」


 ロシェトナが変な造語を言い始めた。

 

 ――三人とも息が整ってきてる。もう少し回復したら無理やりにでもテントを張らせよう。

 

 ガラスの瓶を軽く振って薬の反応を見る。


 魔素濃度の検査薬を溶かした水はピンク色に変わっている。濃い赤になればなるほど魔素濃度が高いことを示す。

 ピンク色なら普通よりも少し魔素濃度は高いが飲める範囲だ。


 水質の検査薬の方は緑色の粒が瓶の底に薄っすら付いている。汚れが激しいほど緑色の沈殿物が出るがほとんど出ていない。

 

「水質良好。人間の手がまともに入っていない山だと綺麗だな」


 キャンプ予定地の周囲を見回っているとき、魔物や魔獣の痕跡がすぐに見つけられた。

 人が近くに住んでいたのなら魔物除けの結界などでまったく山に魔物や魔獣は住めなくなるはずだ。


「さて、これからやることを話そうか」


 倒れていた三人が半身を起こす。

 テントを張っていた二人は手を止めた。


「簡単に言えば二週間、山の中で自給自足してもらう。食材も水も自分で確保しろ。それプラスで俺が魔法を教えて、ヤシュヤに身体の動かし方を教えてもらう」

「アレ? ルーカス先生が全部教えるんじゃないんスか?」

「俺がいくら効率のいい魔法の使い方を教えても肝心の魔力を作り出すだけの体力がないと話にならないんだ。特に地面に座ってる三人は」


 俺が三人を指さすとダリウスが顔をそっぽ向けた。


「ご飯作ったことないんですけどー?」

「その辺も教える。ちなみに食料採ってこれなかった奴は基本、飯抜きな。三食抜きはキツイから夜だけは俺が用意する」

「ロシェちゃん! ルーカス先生は悪魔先生ですーっ!」

「悪魔で、人でなし……」


 ――悪魔ではないけど、半分は竜だから人でなしは間違ってないんだよなぁ。


「最初の二日は飯ちゃんと用意してやるよ。何が食べれるか、どうやって採るかわからない奴にやれとは言わないからな」


 師匠は子供にも容赦なかったから俺は山に放り出されて死にかけた。最初に食べた葉っぱが下剤薬に使われる葉で腹痛地獄。


 絶対にあんな体験だけはさせない。


「ちょっとだけ悪魔教師に降格させますー」

「二日後に、悪魔教師にランクアップ……」

「変な事を言う暇あるならさっさとテント張れよ」


 ユンとロシェトナに俺は呆れながら作業をするように言うのだった。





次回4/5更新予定

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