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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と魔導と教師のお仕事?
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力の証明ですか?

 俺が練習場の扉を蹴り開ける。

 二つの消えない炎と三人の生徒が俺を見ていた。


 ロシェトナの分の炎が消えている。


 ――こいつの知識は本物だな。


「拉致、してきた?」


 感心していると失礼なことを言ってきたので褒める気が失せる。


「してないって――いっつ!」


 脇に抱えられていたダリウスが俺の手に噛みついてきた。

 思わず放してしまう。


「お前マジで何なんだよ! 叔父上は前より怖くなるし、叔父上に楯突くし、オレを物みたいに運ぶし!」


 捲し立てるダリウスに他の生徒が引き気味に見る。


「初めに言ったはずだ。俺はただの研究者だ。教師は仕事でやってるだけだ」

「なんで魔法師の資格もない奴が臨時講師なんだよ!」

「今更その質問かよ」

「ルーカス先生ー、ホーランド君そのときは気絶してたんじゃないかなーって」


 ――保健室送りにしてたな、そういや。


「資格な。確かに俺は持ってない。でも資格を持っただけのヘッポコ魔法師よりも強いし正確な知識を持っているぞ」


 ロシェトナがこくこくと奥で頷いていた。


「証明して見せろよ。叔父上を罵倒したんだ。できるだろ」


 ユンが力強く目を瞑って怯える小動物のようになった。

 リオンも青ざめている。


 魔素分解専用の魔導陣を鞄から一枚取り出す。


「ルーカス先生は怖いもの知らずですか?」


 リオンの言葉に俺は鼻で笑った。


「俺にとって怖いことは『無知』と『人間の闇』と『師匠』だけだ」


 ――魔素分解範囲、練習場に限定。全力分解、開始。


 俺の手にある魔導陣が発光する。

 もう一つ太陽ができたかのように激しく、光を放つ。


「なんだ!?」

「目が、開けてられないっ」


 三秒ほど分解したところで魔導陣が光を失う。

 代わりに空気中に光の玉が浮き上がる。


 練習場の中心にゆったりと発光体は漂う。


「魔素の、枯渇?」


 ロシェトナが一番最初に声を出した。


「え、この一瞬で?」

「ありえませんよ。この辺りは普通より魔素が濃いんですよ。大規模な魔法を数回行使しても枯渇しません」

「でもお前ら、魔法がマジで使えないぞ」


 ダリウスが手持ちの魔石をユンとリオンに見せる。

 ずっと点滅して、魔素の分解が継続できなくなっていた。


 全員が魔石を取り出して確認する。

 同じように点滅するだけで魔法を使うだけの魔力が作れていない。


「エセ教師がやったのか」

「まだ終わってないぞ」


 分解して作った大量の魔力は俺の支配下にある。

 魔力をこのまま霧散させてもいいが、それでは芸がない。 


 ――イメージはユビレトで戦った人工竜の放った息吹。すべてを破壊し尽くす横暴な竜の一撃。


生成(ライズ)――竜の息吹」


 天に向かって魔力の塊を線上に放つ。

 風圧が窓を揺らし、遅れて轟音が耳を刺激する。


 練習場にある木の的が折れる。

 生徒たちは地面に伏せていた。


 竜の息吹をイメージした魔法は青空に浮かぶ雲に大きな穴を開けていた。


「すっげ……。雲に届いてる……」

「砂が口に入ったー……」

「本気、これがせんせいの……」

「うーん、思ったのとなんか違う魔法だな。イマイチ」

「「「「どこが?」」」」


 生徒たちが一斉に俺に質問してきた。


「一部拡散している部分があった。イメージ不足だな」

「「「「「どこが!」」」」」


 いつの間にかヤシュヤが増えていた。


「何やってるんスか!? ウチが見てないとこで変なコトしないで欲しいッス!」

「実力の証明。ちゃんと被害は出ないように上に撃ったぞ」

「あーもう! ダリウスくんのこともあるのに!」

「いるぞ、後ろに」


 ダリウスを確認したヤシュヤがヘナヘナとその場で座り込む。


「……ウチ、サポート降りたいッス」

「それは困る。さっきガリオンのバカにケンカ売ってきたところだ。ヤシュヤの手伝いが必要だ」


 自分の甥を平気で叩くガリオンのことだ。切羽詰まれば何を仕掛けてくるか分からない。

 俺に関わった四人の子供にも火の粉がかかるかもしれない。


「バカはルーカス先生ッス! 知らないところで火花バッチバチにやって来てるんすか!?」


 ――とりあえず策は練るか。


「四人揃ったし、かくれんぼでもするか。じゃ、俺は隠れる。五秒だけ隠れる時間くれ」


 練習場から走りだす俺。


「は・な・しを聞いて欲しいッス!!」


 俺を追いかけてくる怒ったヤシュヤ。


「あれだけの魔素分解して元気なのおかしいだろ、教師もどきのヤツ」


 ダリウスが苦笑して、首を横に振っていた。


 ―― ◆ ―― ◆ ――


「こんな授業なら、悪くない」

「リッターは頭おかしいのか?」

「おかしいのは、嫌いじゃないよ」


 ロシェトナはイヴァンの消えた入口へ走り始める。


「待ってよー、ロシェちゃん!」


 コケそうになるユンをリオンとダリウスは見ていた。

 リオンも遅れて駆け出す。


 ダリウスは穴の開いた雲を眺める。


「ホントにこんなお遊びで試験合格できるのか、証明してもらおうじゃねぇかクソ教師」


 ――かくれんぼはこうして始まった。

夜勤三連後の投稿は無理があった。


次は12/15予定です。

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