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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と魔導と教師のお仕事?
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これが教科書ですか?

 

 俺は爆散(バースト)で吹き飛んだ机と椅子を綺麗に配置した。

 ユンとリオンも手伝ってくれた。


「で、ケンカの原因はなんなんだ」


 片付け終わった机の上に腰を下ろして、目の前に立つ二人に俺は尋ねた。


「ダリウスが僕には才能がないって言ってきて……」

「先生ー。わたし見てましたー」


 むっとした顔をするリオンの横でユンはまっすぐ手を挙げて証言する。


 勝手にダリウスが暴れているだけのようだ。

 資料にも問題児とは書かれていたが、早々に目の当たりにするとは思わなかった。


「ダリウスの方はヤシュヤが保健室に運んでくれてるから心配はないだろうし、このまま授業でもするか」

「教科書って使います?」


 リオンが机の下にある鞄から本を取り出した。


『魔法科教本』と書かれた本が俺には輝いて見える。


「教科書って教科書か! ちょっと見せてくれ!」

「は、はい」


 リオンが引き気味に俺に教科書を差し出す。


 一般的な本と変わりなさそうな皮の表紙をめくると、何を習うかわかりやすく書かれた目次があった。

 

 色付きの絵が載っているページもある。


 本は誰でも買えるような値段だが色付きは贅沢だ。色があるだけで売値が十倍はする。

 製産するコストが跳ね上がると竜にまつわる本を何冊か出しているメリアから聞いたことがある。


「研究資料とかは良く見るが、教科書は初めて読むな」


 俺の目的の最終形が手の中にある。

 将来、世界の秘密を教科書に載せて驚かせるのは楽しみで仕方がない。


「教科書見て笑ってるね」

「そんなに面白いかなー?」


『魔法科教本』は数値や文章の前後関係に研究資料ほど神経を使って読む必要がなさそうだ。


 さくさくと読み進めれる。


 始めは心躍っていた。しかし、読めば読むほど『魔法科教本』を破り捨てたくなっていく。


 魔法における現象が図で簡単に説明されているだけ。現象発生の理由がまともに書かれていない。

 用語の解説も簡略的だ。


 口頭や黒板に書いて補足するのしても、知らない人間に伝えるには不十分すぎるだろう。

 初心者が魔法を学ぶための教科書というよりも中級者向けの資格試験対策書というのが俺の印象だ。


 ――こんなの知識の詰め込みじゃねぇか。一体、何が学べるって言うんだ。


 俺の疑念は次のページで怒りに変わった。


「ふざけんじゃねぇぞ! 『魔法陣は不要なもののため説明を省略する』だと! 確かに主流は魔石魔法だがそれはないだろうが!」


 魔石を利用した魔法のベースは魔法陣だ。

 時代と魔法形式の移り変わりにおいて重要な魔法陣を『不要』の一言で切り捨てるのは問題以外の何ものでもない。


 俺は一呼吸して落ち着かせる。


「すまん。大きな声出して」


 怒りであふれ出した俺の叫びにリオンとユンが強ばっていた。


「なんで謝るんです? 先生でしょ?」

「先生だろうが研究者だろうが間違ったことしたら謝るものだ」


 教科書を破いてしまう前にきょとん顔のリオンに返す。


「お前たちこんなクソみたいな教科書で学んでたら魔法師にはなれても未来はないな」


 魔法師になった後、知識面で痛い目に合う姿が容易に想像できる。


「作ったのはガリオン先生ですよ」


 俺はリオンから教科書を奪い取って著者名を探す。

 一番最後のページの左端に『ガリオン=ホーランド』と確かに記されていた。


 ――救いようのないクズだな。クズのせいで削られた知識で間違った魔法使われたらたまったものじゃない。


 机から降りて教科書を片手に教壇の上に立つ。


「あんまりやる気はなかったんだが事情が変わった。本気で教えるからお前ら席に着け」


 ―― ◆ ―― ◆ ――


 授業終了のチャイムが鳴った。

 

 ――時間が過ぎるのが早すぎる。


 時間は気にしながらやったつもりだった。それでも、まとめに入る前に時間切れになってしまった。


 俺は後ろの黒板には魔石と魔法陣の関連図と時代背景が書いてある。

 一度書いたことを消すことが面倒だったため、図を大きく書いて隙間に注釈を追加されている。


「もう終わりらしいからまとめだ。魔石は元々魔導具の動力資源としての価値しかなかったこと。魔石が魔法陣の代替品として使用されるようになったのは八十年前から。この二点は覚えておけ」


 リオンとユンは二人して黒板に視線を向けたまま固まっていた。

 板書が終わっていないのかと思って二人のノートを見る。


 ――書き終わってるな。なんだこの静けさは。


「分からないところがあったなら言えよ。分かるまで付き合うから」


 教卓の上で頬杖をついていると教室の奥からパチパチと拍手が聞こえた。


 スーツを身に纏った校長のオッサンが手を叩いていた。

 きまりの悪そうな顔をしたヤシュヤが校長のオッサンの横に立っている。


「「校長先生!?」」

「ほっほっほっ、一回の授業で三回分ぐらいの内容をやってのけるとは思いませんでした」


 俺は校長のオッサンの胸ぐらを掴んだ。


「「「イヴァン先生(先生)!?」」」


 生徒二人とヤシュヤが悲鳴に近い声を出す。


「ここの教育はどうなってるんだよ。あんな教科書じゃまともな魔法師は育たねぇぞ」

「わかっておりますよ」

「だったらなんで手を打たない!」


 俺の魔導陣を読み解いた校長のオッサンが現状を放置しているのは絶対におかしい。


 無知で使われる魔法は悪意に満ちた魔法よりも質が悪い。なぜなら本当に成功しているのか失敗しているのか判断できないからだ。判断できないから失敗したとき対処ができない。対処が出来ないから被害が広がるだけ。


 あっという間に魔法災害の完成だ。


 校長のオッサンが理解していないはずがない。


「ちゃんとした知識で魔法を使えば便利で有益なものなんだ。なんで教えてやらないんだ」

「落ち着くッスよ!」


 ヤシュヤが俺の手を校長の襟元から力ずくで引っぺがす。


「本当に貴方を呼んでよかったです。――ルーカスさん、私と一緒にこの学校を救ってくれませんか?」

9/1に更新できたらいいなって

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