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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
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咆哮、ゴーレムドラゴンの息吹

 

 ◆ ◆ ◆


 俺は竜化した脚で竜型土人形(ゴーレム)を追う。

 頭上を見上げると巨躯を左右に揺らして歩いているのが見える。


「まさか即決されるとは思わなかったよ」

 

 俺の脇に抱えられた写本が呆れたような口調で喋った。

 写本が言っているのは俺が身体を譲ることを承諾したからだ。

 

 ――条件を多少つけさせてもらったが。


「悩む余地なんてなかっただけだ」

「誰かが傷つく姿を見たくないとかかい?」


 竜型土人形(ゴーレム)に無理やり折られたであろう木の幹を俺は飛び越える。


「俺はそんな英雄染みた考えは持ってない。ただ魔法が不幸を振りまく場面を研究者として放置できないだけだ」

「今の発言は充分に英雄染みているよ。他人の不幸を進んで抱え込もうとしてるんだからね」


 写本から出たのは予想もしてない感想だった。

 俺は内心、首を傾げる。


「それはそれとして、ボクとの約束は守って貰うよ」

「代価は払う。だから力を貸しやがれ」


 俺の手持ちにあった薬のほとんどは怪我人の治療用にメリアとケイオスに託した。

 すぐに使えるものは手元にあるのは魔導陣が九枚。


 ――準備不足を呪いたくなるな。


 竜型土人形(ゴーレム)の脚を視認する。

 俺は地面を力一杯蹴り上げて空中に飛び上がる。


「出番だぞ、クソ写本!」

「え、待って作戦とかは? 考えているんだよね?」

「お前が止めて俺が魔法を解体する。それだけだ」

「作戦とは言わないよ!?」


 写本を掴んで、竜型土人形(ゴーレム)の眼前を目がけて投げつける。

 

 俺はそのまま竜型土人形(ゴーレム)の背中にあった翼を掴んだ。

  

「考える時間がなかったとはいえ、ボクの扱いあんまりだと思うんだ……」


 抗議の声が聞こえたが、知ったことではない。

 俺は俺で魔法陣の解読と魔力の経路(パス)を奪取する作業に入らないといけない。


 背中に乗って、間近に竜型土人形(ゴーレム)の表面を注視する。

 土の身体に彫られた精密な魔法陣。針の先のようなもので書かれた図形と文字。

 

 完全な解読をしている暇はない。

 魔力の経路(パス)を制御している魔法陣を見つけることが先決だ。


「黒竜くん、何かに捕まっといてくれよ」


 写本が土人形(ゴーレム)の周囲に魔法陣を展開していく。

 展開された魔法陣から巨大な鎖が出現する。


 俺は写本の言葉通り、土人形(ゴーレム)の身体にしがみつく。


 竜型土人形(ゴーレム)の四肢に鎖は絡みつき、歩みが止まる。

 山にあるどの木よりも高い土人形(ゴーレム)の背中から下を眺めるとユビレトの街へと繋がる魔導列車の線路と駅の入り口が見えた。


「とりあえず、時間は稼げそうかな」

「そうだな。ここからは俺が頑張らないとな」


 写本と話していると竜型土人形(ゴーレム)の全身が青白く発光する。

 

「魔法陣が全部活性状態になってる……?」


 写本が俺の横で浮かぶ。

 俺は魔力が竜型土人形(ゴーレム)の口に集まっていることに気づく。


「こいつ、見た目だけじゃないのか!」

 

 鞄から魔導陣を四枚取り出す。

 俺も慌てて魔素を分解する。

 

 ――魔素一斉分解、魔力生成完了。壁の展開座標、ユビレト。


 竜型土人形(ゴーレム)が街に向かって口を開ける。


生成(ライズ)!」


 魔力の光線が竜型土人形(ゴーレム)から放たれる。

 俺の展開した透明な魔法の壁が光線を遮断する。

 

 あと一秒でも遅かったらユビレトに光線が届いていた。

 

 俺の魔法と魔力の光線がぶつかり続ける。

 

 ――重い。俺の集中が切れたら全部終わりだ。


 光線を吐き続ける竜型土人形(ゴーレム)


「竜の息吹を再現しているんだね」

「感心してないで手伝え!」

「そういうけど、黒竜くんがすごい勢いで魔素を分解するから安定して魔力が作れないんだ」


 手加減なしで分解しているせいだ。しかし、壁に魔力を補給し続けないと破られてしまいかねないため、緩めることも出来ない。


 光線の勢いが弱くなる。

 細くなっていく光線を見て、肩で息をしながら安心する。


 魔素の分解で体力を一気に削られた。


「大丈夫かい?」

「まだ大丈夫だ。次、来たら写本頼むぞ。俺は解析を――」


 また竜型土人形(ゴーレム)の身体が光る。


「間髪なしか!?」

「次はボクが間に合うよ」


 写本が作り出した障壁が光線を阻む。

 

 俺は魔法陣の解析に専念できそうだ。


「黒竜くん、良いことと悪いことどっちから聞きたい?」

「こんなときに話してる余裕はないぞ」

「じゃ、勝手に喋るよ。この竜の息吹もどきを止めるのはボクには造作のないことだよ」


 おそらく良いことの方だろう。

 魔法陣の内容を確認しながら耳だけは傾けておく。


 ――っち、この辺りの魔法陣は腕の制御専用じゃないか。


「悪いこととしてはね、何度も竜の息吹もどきが来ると鎖が持たないかも」

「は?」


 思わず声を出さずにはいられなかった。


次は5/18に更新出来たらいいな、っと思ってます。

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