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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
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震撃、終わらない悪夢

「どこだ、メリア!」


 崩れる廃坑の壁と天上。

 俺はその中をクウェイトと入れ墨の男を抱えて動く。


 魔法が使えれば良いが周囲に魔力がない。

 竜型の土人形(ゴーレム)が起動したことで漂っていた魔力がごっそり持って行かれてしまった。


 聞こえた悲鳴手掛かりに進むしかない。


「壁際を歩いて! 少しは天上の崩落が遅いはずだ!」


 悲鳴が聞こえた方から廃坑にいるはずのないケイオスの声がする。

 俺のいる通路の左の壁が邪魔だ。


「ここまで崩れてたら竜の力は関係ないか」

 

 俺は竜化した右足で軽く土の壁を蹴る。


「んにゃぁ!!」


 土煙が舞う。

 壁には人が通れる穴が空いていた。

 

 穴向こう側。

 目を白黒させているケイオスと破れたドレス地面に転がっているメリア、そして見慣れない人間が十人ほどいる。


「やっと見つけた」

「何が見つけたのかな!? 私ふっとんだんだけど!」


 メリアは騒ぐだけの元気が有り余っているらしい。

 催眠魔法が掛かっていると思っていたが、魔力が感じられない。


 ――魔法が解けていると見るべきか。


「あーもう! もうちょっと王子様的なもの期待してた私がバカみたいだよ!」

「王子って何の話だ。あとなんでケイオスがいるんだ」

「色々あってね。こちらも君が抱えているクゥのことでいくらか質問がしたいが――」


 天上の土に亀裂が入る。

 砂が髪に当たる感触がする。


「とりあえず外に出ることが先決だね」

「そうだな。おいメリア」

「なぁーにぃ」


 メリアは不服そうな顔で顔に付いた土を払っていた。


 ――助けに来たのに何故そんな顔をされないと行けないのか謎だ。


「俺の胸ポケットに地図があるから先導してくれ」


 魔法で作ったあのときの地図を使えば最短ルートで抜け出せるはず。


「ま、しょうがないか。イヴァンだもんね」

「今すげえ罵倒された感じがした」

「お願いだから、この状況で喧嘩しないでくれないかい……」


 ◆ ◆ ◆


 メリアの先導で廃坑を抜け出した俺たちは廃坑の入り口付近で休憩することにした。

 時折廃坑の中で土の崩れる音が聞こえてくるが、地図を見る限り俺たちの休憩している地下には通路がない。

 

 落ち着いて話ができそうだ。


「さてと、互いに話すことがありそうだな」


 俺の知らない人間たちの肉付きは明らかにおかしい。

 あばら骨がはっきり見えている。脚も細すぎる。


 廃坑の中を逃げるペースが遅かった気はしていた。

 メリアとケイオス以外は走ることすら危うかったからだろう。


 ケイオスも前にあったときよりも痩せている。


 ――こいつら飯を食ってないのか?


「私たちは地下に監禁されていたんだ。催眠魔法の強制労働付きだよ」

「メリアもか」

「わかんない。正直、頭クラクラの中で竜のこといっぱい質問された気はするけどそれだけかな」


 落ち着いたらメリアに催眠の後遺症がないか確認しないといけないようだ。

 聞いている限りではそれほど酷い精神干渉は受けていないだろう。


「こっちはメリアが攫われて助けに来たらクウェイトが操られていてな」

「クゥは大丈夫なのか!」


 動揺したケイオスが痛いぐらいに俺の肩を掴みかかってくる。

 こっちもこっちで元気そうだ。


「おそらく肉体の方はな。精神面がどうなってるかまではわからない。今は魔法で眠らせている。あと、催眠魔法使ってた奴の仲間がそこで伸びてる入れ墨のオッサンな」

 

 顎で指すと、ケイオスが険しい顔をしていた。


「殺すなよ」

「やらないさ」


 ケイオスはそう言うとクウェイトの横で腰を下ろした。

 今にも涙を流しそうな顔で妹の頬を撫でている。


「おーい、誰かー。助けてくれー」


 廃坑の近くで声がする。

 気になって歩いて行くと、土の中から頭だけ出したオリバーがいた。


「何やってるんだよ、ドジ」

「いやー、急に土砂が崩れてきてさー。敵に気を取られて後ろの警戒してなくてそのまま埋まっちゃった」


 あははは、と笑うオリバーに俺は肩を落とした。


「とりあえず、軽く掘るぞ」

「お願いしまーす」


 手を竜の爪に変えて掘る。

 土がさくさく掘れる。ゼリーのように柔らかい。人の手ではこんな風に行かないだろう。


 肩まで見える様にしたところで引っこ抜く。

 芋のようにずるずると出てくる。オリバー以外に人間が二人も出てきた。


「ぺっぺっ。はー死ぬかと思いましたよ」

「なんでギルド奴が地下なんかにいやがったんだよ」


 地下で出会った白衣の男と見たことない小柄な男。

 小柄な男に若干ではあるが魔力が残っている。


 影で移動していた奴と同じ魔力。

 

 カーグと呼ばれていたはずだ。

 

 オリバーが注意を散漫させた原因はこいつらか。


「オリバー、こいつら今回の事件の主犯格だ」

「マジ? お手柄? 超お手柄? ヒャッホー!! たんまり特別報酬もらってしばらく仕事しないぞ!」

「音量上げるな。耳が痛い」


 土砂が崩れる音が止まって静かな夜だったのが一人の男のせいで喧しくなった。

 森の生き物たちが驚いて動き回っているのか、草木が揺れている。


 俺の白衣が何かに引っ張られた。

 

「メリアか。どうした」

「ちょっとイヴァンに伝えないといけないことがあってね」

「手短に頼む。ぶっちゃけさっさと帰って風呂入って寝たい」


 やるべきことはやった。

 メリアの検査もすぐにやる必要性が感じられないから明日の朝でいいだろう。


「手短に出来ないよ。だって、オリ――」


 下から地面が突き上げられた。

 廃坑のからまた音が聞こえた。


 何かが崩れる音だけじゃない。

 動いている。それも大きなものが。


 立っていられないほど地面が上下する。

 周囲の人間は膝をついたり、四つん這いになったりして耐えていた。

 

 廃坑の上にある木が盛り上がる。

 地面を揺らした犯人が出てくる。


「何あれ。竜?」

「多分、私たちが作らされていたものじゃないかい? いや、とんでもないものだよ、まったく」

「竜型土人形(ゴーレム)……! まだ動いていたのかよ!」


 地下で動いていた竜が地上に出てきてしまった。

 白衣の男――イルクが狂気の混じった笑みで高笑いをしていた。


「ふははははは! いいぞゴーレムドラゴン! すべてを壊してしまえ!」

「お前、何をしたんだよ」


 普通の土人形(ゴーレム)であれば、魔法を行使している者と魔力的な経路(パス)で繋がっており、それを用いて命令をする。ところがイルクには経路(パス)どころか魔力がない。


 だから俺はもう終わったと思っていた。思い込んでいた。


「私は竜を創りたかったから創ったんですよ。竜を模しただけのゴーレムではなく、自分で動く生き物としてね」


 竜の表面に書かれた膨大な魔法陣と巨大な魔石を思い出す。


「魔石に経路(パス)を繋いで魔法陣で行動の制御してんのか」

「よくお分かりで」


 魔法列車と同じ要領で魔石をエネルギーに動く。そして動きは魔法陣でパターン制御しているということだ。


「とはいえ、心の再現はできなかったのが悲しいことです。さすがにメリア=マイアットは竜は知れど、竜の心は知らなかった。賭けてみたんですけど、人間には到底理解出来ないんでしょうね」


 気分が良くなっているのかイルクの舌が止まらない。


「なので私の知る竜の行動をベースにしました。――破壊衝動。竜と言えばやはりこれでしょうね、はい」

 

 イルクはいい顔でおぞましいこと宣ったのだった。


 

更新ペースが二週間に一回になるかもしれないです。更新するときは後書きを更新するかツイッターで言います。


とりあえず。次は4/21予定です。

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