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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
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土人形、その護衛役

 頬を引きつらせている俺の目に一瞬、緑色の光が入った。

 

 ――何か光ったな。角度からすると相当下だな。


 竜の形をした土人形(ゴーレム)の胸の部分。

 暗闇の中で時折緑色に反射する物体がある。緑色の反射物から魔素や魔力の反応がした。

 

 ――魔石か。

 

 土人形(ゴーレム)に負けず劣らずの大きさ。

 どう見積もっても俺の身体の十倍はある。

 凹凸(おうとつ)の激しい表面の中に澄んだ緑色があるのがわかる。

 どこから調達してきたかわからないが、一人の人間が一生働いて買えるような金額ではないだろう。

 

「もうすぐだ。もうすぐで完成するぞ!」


 高笑いと共に反響して聞こえる男の声。

 

 俺は近場の岩に隠れて下の様子を見る。


 竜型土人形(ゴーレム)の翼の部分。一軒以上の広さがある足場があった。

 白衣を着た男と顔に入れ墨の入った男が土人形(ゴーレム)の前に並んでいる。


 俺は白衣の男より入れ墨の男に目が行った。

 顔の入れ墨は魔法陣だ。魔法陣を崩してオリジナルの形にして、ただの入れ墨にしかみえないようにしている。

 

 ――魔石を使わないタイプの魔法師か。珍しい。


 主流は魔石を使った魔法だ。

 魔法陣と比べて、持ち運びも魔素の分解も楽なのだ。

 何より魔法陣の知識が無くても気軽に魔法が使える。

 

 魔法陣の場合、少しでも魔法陣を構成する図形が間違っていれば、魔素が分解出来ない。そのため魔力が作れず、魔法が使えない状態になる。

 毎度毎度、図形を正確に書くなんて神経を使う作業を誰もしたくないだろう。

 しかし、魔法陣にも利点はある。


 ――書かれている図は盾、城、否定。見えてる所だけでは何に特化しているかわからないな。


 魔法陣で魔素を分解したとき、生成される魔力が特化した形になるのだ。

 つまり、魔力に適した魔法を使うと効率のいい魔法運用ができる。


 ただ知識ある者が魔法陣を見れば、どんな魔法を使っているのか大体はわかってしまうのがもったいない所である。


 あの喋る本みたいな馬鹿げたものはもちろん例外だ。


「早くメリア助けてここから立ち去らないとな」


 万が一あの竜型土人形(ゴーレム)と戦う事になったら、今の準備では絶対に足りない。

 こんな状況で作戦もなしに戦うのは頭の悪い奴がやることだ。


「――敵、発見しました」

「いっ、て!?」


 俺の背中に堅くて細い物が勢いよく当たった。

 左手で背中を触る。

 包帯の一部が切れていた。

 

 背中を触った手をみると、指先が赤くなっている。


 包帯の下にあった竜の鱗が守ってくれたようだ。しかし、全身竜化はしていなかったから人の皮膚の部分が少し傷ついているらしい。 


「なんです?」

「上に何かいる」


 下二人と俺の目が合った。


「っち、見つかったじゃねぇか」


 背中から攻撃してきた奴を見る。

 よく知ってる顔に金色の髪。


「――クウェイト、お前」


 俺の言葉を無視してクウェイトが剣を振りあげた。 

 今度は両手を竜に変え、腕の鱗で剣を弾く。


 表情が死んだクウェイトを見る。

 空ろな目。

 首がすわっていない左右の揺れ。

 不自然な魔力の痕跡。


「操られてるのかよ」


 精神干渉を受けた人間の症状によくあるものだ。それも強力な精神干渉を受けたときの症状。

 魔法が解除されても何らかの後遺症が残る可能性が遥かに高い。

 耳が聞こえなくなるか、記憶がなくなるか、生きたまま人形のようになるか――。


「これやったのお前らか! ふざけるんじゃねぇぞ!!」


 身体が熱くなる。


 ――こんな間違った魔法があってたまるかよ。


 メリアももしかしたら操られている可能性がある。

 うかうかしていられない。


 俺は白衣の男と入れ墨の男がいる足場まで飛び降りる。

 後ろからクウェイトが追って降りてきた。


「いやはや、とんでもないですね。この高さから飛び降りますか? 普通」


 白衣の男が笑顔で拍手をする。


 クウェイトが入れ墨の男に片膝をついた。


「申し訳、ございません。敵を、排除できませんでした」

「こいつ、メリア=マイアットの」

 

 入れ墨の男は俺のことを知っているらしい。

 堂々とした風貌と口ぶりからメリアの居場所も知っているだろう。


「予定変更だ」


 ――こいつらふっとばして、メリアの居場所もクウェイトにかけた魔法も聞き出してやる。

3/2(土)にまた更新します

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