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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
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護衛の人、本職はナニ?

 目的の廃坑が見える高台の茂みで俺は身を潜める。


 深夜の山の中だというのに、廃坑の入り口には人間が八人もいた。

 当たり前のように全員が魔石の付いた杖やピアスを付けている。

 

 ――魔法師、だろうな。


 さっきから魔法師たちは(しき)りに周辺を見回している。

 廃坑の中に何かあると言っているようなものだ。

 

 警戒している八人の魔法師も問題だが、一番の問題は地下だ。

 活発に魔力が動いている。しかも一人二人の魔法師の手で生み出せるような量の魔力じゃない。

 少なくとも二十人規模。

 

 ――廃坑の奥で何やってやがるんだ?


 メリアが攫われる理由も分からない。

 推測するための材料がなさ過ぎる。

 

「ちょっとさー、俺の仕事増やすのやめてくれない?」


 俺は不意の声に身体をびくつかせた。

 危うく声を出すところだ。


 背後にはジト目のオリバーがいた。


「なんでお前いるんだよ」


 俺が小声で話しかけると、オリバーは無言で懐から紐の付いた鈴を取り出した。

 壊れているのか、鈴の音がしない。

 

 鈴の外身には魔法陣で使われる『音』の模様が彫刻されている。中に入っているのは小指の爪より小さな魔石だ。

 

 ――魔導具。それも探知系の。

 

「『狩人の鈴』が鳴ったんだよ。これは俺が仕掛けた罠に誰かが引っかかると鳴るんだ」


 条件を満たしたときに鈴を鳴らすだけの単純な魔法。条件付けすることで魔力の消費を抑えるようになっている。

 何より鈴本体の魔力の隠蔽性が高い。魔石と『音』の彫刻がなければ魔導具だと分からない。


 獲物を密かに狙う狩人に相応しい作りだ。


「鈴を鳴らした罠がルーカスさんの部屋の窓に仕掛けた防犯用だったワケ。ひょっとしてと思って来てみたら案の定だったんよ」

「いつの間に」

「ルーカスさんがガルパ・ラーデの副代表に連れて行かれている間に糸でちょちょいと」


 オリバーが指先で糸を巻くような動きをする。

 

 ガリオンとヴェルデが一悶着起こした後に仕掛けたらしい。


「姿を暗ましたかと思ったら、そんなことやってたのかよ」


 俺が罠に掛かったときオリバーがどこにいたかわからないが、ギルドにいた場合はユビレトの四分の一以上が鈴の効果範囲となる。

 他の街と比べてもユビレトは大きな街なので、四分の一も探知範囲があれば十分な性能だ。

 

 ――ただの護衛ギルドの一員が持つにしては不釣り合いなぐらいに高性能な一品。


「お前、何者だ? 罠を仕掛けたり、鍵開けをしたり普通は出来ないぞ。まるで――」

「泥棒みたい、って?」


 俺の言葉を盗んだオリバーはニヤリと含み笑いをする。


「そりゃ、元は泥棒ですからねー。なんだかんだあって今は護衛ギルドにいるけど。人に歴史ありってやつさ」


 オリバーは下にいる不審者たちを見た。

 人数を数えているのか、頭を小さく上下させている。


「下の奴らは任せな。ルーカスさんは廃坑の中へ」


 声と共にオリバーが消えた。


「うわぁ!?」

「だ、誰だテメー!?」


 下で叫び声が聞こえる。

 覗くとオリバーが両手のダガーで人間を一人切り伏せていた。

 

「おい、敵襲だ!」

「中に居る奴に連絡し――があぁ!!」


 次に指示を出そうとした奴を今度は腹部から容赦なく切り裂いた。

 あっという間にオリバーは血まみれだ。

  

 俺は俯瞰して戦闘を見ているからオリバーの位置を辛うじて把握出来ている。


 木の幹を踏み台にして高速で動き回る。

 まるで獣だ。


 ――おいおい、素早さだけなら竜化の俺以上じゃないか。


 様子を見ているとオリバーが俺を睨んだ。

 早く行け、ということらしい。


 俺は急いで高台から飛び降りる。

 着地の時に木の枝を踏みつけて、いい音を出してしまう。


「もう一人いるぞ!」


 ――暗闇の中で物音がしたら、見つかるよな!?


「お前たちの相手はこっちだよ」


 魔法師の後頭部をオリバーが肘で殴る。

 地面の上に魔法師が力なく倒れた。


「とっとと行けよ、ドジ」


 むかっ腹が立ったが、否定は出来ない。


「本当に任せるからな」


 俺は一言だけ残して外よりも暗い廃坑へ突入した。


 ◆ ◆ ◆


「もういいかなぁ」


 イヴァンの背中が廃坑に吸い込まれていくのをオリバーは確認する。


「お前ら、囲め囲め!」


 魔法師たちは奇襲されたことによる混乱から立ち直り始めた。

 残っている魔法師は五人。


 たった一人のオリバーを五人が囲む。

 

 魔法師たちの持つ魔石が暗闇の中で強く光る。

 人の頭ぐらいの大きさの氷塊が一斉に作られた。

 

「あのー、俺に魔法使うのは止めといた方がいいと思うよ?」


 気を抜いたオリバーがダガーを持ったまま欠伸をする。

 

 魔法師たちはオリバーの言葉に耳を傾けることなかった。

 氷塊が放たれる。


 欠伸を終えて涙目のオリバーに氷塊が当たる。当たったところから氷が身体を浸食していく。

 オリバーは氷像へと変わる。


「中に入った奴を追うぞ。邪魔されてはたまらんからな」


 魔法師たちはオリバーを放置していたら勝手に死ぬと思っていた。


「――錬成(ライズ)付与(エンチャント)


 氷の中から炎の衣を纏った男が出てくるまでは――。


「魔力供給、ありがとさん」

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