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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
5/162

噂と金

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 俺が依頼を承諾した翌日。

 朝から街は騒がしかった。


 俺の住む街、サルベアは竜や魔法の研究者の集まる街で、人口の半分以上が研究者かその関係者だと言われている。

 研究者という比較的大人しい人種が多いためか、何かの催しがない限り、この街は騒々しくはならない。


 俺の研究室はそんな街の最南端に位置している。

 研究施設が多く並ぶエリアで、人の出入りが多い方だが、それでも騒がしいという認識を持つほどの何かが起こることが稀である。


 実は昨日のメリアの言葉からこうなることが察しがついていたりする。

 研究室の窓を開けると、外にいる人たちの話し声が聞き取れた。


「オリフィスがこの街に来るそうだぞ」

「あの盗人が? なんでまた」

「なんでも、ラナティスの研究者がどえらいものをどっかの遺跡から持ち出したらしいぞ」

「それを盗みにくるのか。なら、俺たちの研究には関係ないな」


 案の定、オリフィスのことだった。

 オリフィスのことを盗人と表現していたが、何も間違っていない。


 師匠の研究のこともあるが、それは始まりに過ぎない。

 世間一般的には『歴史的遺物や研究を盗む存在』として、オリフィスは認知されている。

 研究者からすれば、存在価値を奪われる行為だ。


 事実、研究資料をすべて盗まれて、ショックのあまりに自殺した研究者もいるらしい。


 ――今回の依頼で、本当に現れたら捕らえてやる。

 

 オリフィスと鉢会えば、戦闘は必然だ。念入りに準備をしなくてはいけない。

 

 調査用の器材と共に戦闘用の道具を揃えるため、そしてオリフィスの情報を得るために、俺は騒がしい街に出掛ける準備をする。


 準備と言っても、腰に鞄をつけるだけだ。


 鞄の中には、俺がいつも調査に使う試験管と数十種類の薬品が詰め込まれている。

 いつ、どんなときでも、必要なものがすぐに取り出させるように整理しているつもりだが、俺以外は何が何なのかわからないだろう。


 実際、メリアに中身を説明したら「この中から一つの薬を見つけるのは、竜の逆鱗を見つけるのといい勝負だね」とげんなりと表情をしていた。


 ――表現に竜を使うのが、メリアらしいというかなんというか。


「イヴァン、いるか?」


 研究室の扉の外から、俺の名前を呼ぶ男の声を聞いて、首を傾げる。

 声の人物の答えが俺の考え通りなら、この時間は仕事中のはずだ。


 研究室の扉を開けると、そこには鎧姿の青年がいた。

 鎧には、ラナティスを象徴するルーペの紋が刻まれている。

 これを着ることができるのは、ラナティスの警備兵だけだ。


 警備兵の男――マイロは軽薄な笑みを浮かべている。


「何かあったのか、仕事中だろ」

「いやなに、メリア博士にこれをお前に渡すよう言われてさ」


 へらへらしながらマイロは俺に布の袋を握らせた。

 チャリン、と金属がぶつかる高い音がする。


 袋の中身は金貨が二十枚ほど入っていた。

 俺の給料が月に銀貨五十枚。これはその四十倍。


 贅沢さえしなければ、五年は何の問題もなく暮らしていける超のつく大金だ。


 俺は袋とマイロの顔を交互に見た。


「マイロ、どこからこの金を盗んだ」

「人の話を聞いてたか?」

「冗談だ。で、なんでお前が持ってきた」


 俺に金を届けることが警備の仕事とは思えない。


「ん? メリア博士に頼まれたから」


 当たり前の用にマイロは言った。

 俺は何を言われているのか分からず困惑する。


「それだけか」

「それだけって、メリア博士綺麗じゃん。白衣の美女とか最高じゃん? 男なら言うことホイホイ聞いちゃうでしょ? 聞いてあげないと罪でしょ」


 メリアの外見は相当整っている『らしい』。


『らしい』というのは、俺の人に対する美的センスというか人の容姿に対する感性がずれているからだ。


 特に俺は女性の綺麗や可愛いといった部分を受信する機能が軒並み壊れているのだ。


 師匠曰く「俺の感性は人よりも竜よりだ」そうだ。竜の感性も師匠の言葉の意味もよくわからない。


 ――罪とまできたか。その道理だと、俺は何度も罪を犯してきたことになるな。


「お前はいいよなー。メリア博士の部下だから合法的に傍にいれるんだから」


 マイロは妬みの視線を送ってくる。


 メリアはやめとけ。身が持たないぞ、と注意しようとしたが止めた。メリアに頼まれたらマイロは尻尾を振って従うのだ。


 ――にしても、この金をどうしろというのだ。依頼料の前金にしては貰いすぎだ。


 袋の中を見ると、一枚の手紙が入っていた。

 メリアの文字だ。


 紙に書かれた文字に腹が立った俺は、紙を細切れになるまで破く。

 マイロはどうした、という顔をしていた。

 それに、なんでもない、とだけ返して、マイロと分かれる。


 紙にはこう書かれていた。


『今回の支度金と今後の生活費に』


 ――ふざけるな。依頼主が失敗したときのこと考えるなよ。

 

 俺はラナティスと縁を切るつもりはない。

 

 紙を握り潰した。

 今回の依頼に必要なものの費用はこの金から使わせてもらうが、残りは叩き返してやる。


「怖い顔してどうしたよ」

「馬鹿な依頼主にムカついただけだ」

「へ?」


 俺はマイロを置いて、器材の調達に早足で向かうのだった。

PVが一ヶ月で100超えればいいだろうと思って投稿したのですが、なんかすでに150いってました。

読者の方々、ありがとうございます。


とりあえず、この作品の更新は基本、週に1~2ページ(?)ぐらいのペースでやっていこうと思います。

筆が進んだら最初の3ページみたいに一気に投稿しますけど・・・・・・おそらく、稀です。

<9/24>オリフィスがすべてオリフェスになっていました……。修正済

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